晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

スティーヴン・キング 『シャイニング』

2010-03-17 | 海外作家 カ
思えば、スティーヴン・キング原作の映画作品はけっこう観ていて、
でもその原作の小説はまだひとつも読んでいないということに気づき、
さっそく読んでみることに。
宮部みゆきさんが「小説の師匠みたいな存在」といったようなことを
公言されているので、面白いのは折り紙つきなのですが、なるほど
これはただ怖いだけではなく、情景や心理の描写の緻密さで、ぐい
ぐいと物語に引き込まれます。

ジャック・トランスという名の男が、コロラドの山中奥深くにある「オー
バールック・ホテル」の冬季管理人の面接を受けます。
オーナーはさる有力な人からの紹介ということで、売れない作家で元
教師のジャックを不本意ながらも採用。ジャックの妻と息子の3人で、
冬の間、ホテル休業中の管理をすることになります。

妻ウェンディ、息子ダニーとは、現在こそ良好な家族関係ですが、ほんの
少し前までは、ジャックのアルコール中毒と時たま起こす「癇癪」で一度
などダニーの腕を骨折させてしまい、さらに生徒による暴力で教師をクビ
になり、荒みきっていました。

一方、息子ダニーは、よく悪い夢にうなされます。そこには「トニー」という
少年が出現し、いろいろなことを教えてくれます。あたかもそれはダニーに
予知能力でもあるかの様で、じっさいダニーは他人の考えを「読む」ことが
できるのです。しかしここ最近、トニーが不気味な忠告をダニーに与える
のです。

ホテルに到着するジャック一家。ホテルの中を案内され、料理長のハロー
ランを紹介されます。このハローランもダニーと同じような「能力」を持って
いて、ハローランはダニーに、その能力は「かがやき」というもので、この
ホテルにはさまざまな悪い何かがいるけど、決してダニーたちに悪さは
しないと言い、しかし、もし危険な目にあったら、頭の中で呼べば助けにくる
とダニーに約束します。

そうして、ジャック一家を残し、従業員は方々に去ります。さまざまな仕事に
精を出すジャック。しかし、動物のかたちに刈り込められた植木が「動いた」
ような気がしたり、地下のボイラー室に置いてあった過去このホテルで起きた
さまざまな事件の切り抜きにジャックは心奪われたり、どうにも様子がおかし
いのです。
そして、立ち入り禁止と言われていたスイートルームに呼ばれるように入る
ダニー。なんとバスルームには女性の死体が。その死体は起き上がり、ダニー
のもとに歩み寄って、ダニーの首をしめて・・・

密室ホラーというか、ホテルという存在そのものが家族を狂わせ、襲います。
ジャックはホテルにだんだんと蝕まれてゆき、とうとう心が崩壊、息子と妻
を殺そうとするのですが、そこに至るまでのジャックが人間性を失ってゆく
過程の描写が芸術的といえるほどコワイ。

恐れ入りました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 夏目漱石 『道草』 | トップ | 船山馨 『石狩平野』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

海外作家 カ」カテゴリの最新記事