晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

綿矢りさ 『夢を与える』

2010-05-07 | 日本人作家 ら・わ
綿矢りさといえば、「インストール」という作品で、高校在学中に
当時最年少で文藝賞受賞、そして「蹴りたい背中」で、こちらも
最年少で芥川賞受賞と、華々しい文壇デビューとなったわけで
すが、『夢を与える』は、3作目となります。

母親の幹子は日本人、父親のトーマはフランスと日本のハーフ、
このふたりの間に生まれた夕子は、母の知り合いの紹介で、チャ
イルドモデルになります。そのうち、有名な食品会社のチーズの
CMに、夕子を子ども時代から大人になるまで、その成長ととも
に半永久的に出演し続けるという話がきて、夕子はCMに出演。

チーズのCMに出演している無名の子役は徐々に評判を呼び、
夕子のもとにくる仕事のオファーは増える一方、母親兼マネー
ジャーの幹子だけでは手が回らず、大手のプロダクションに
入ることに。

バラエティやドラマ、歌といったマルチな活躍の夕子、しかし
子育ての方針で母と父は対立、あげく父は日本語の勉強をしに
きたフランス人女性とマンションに住み、母と夕子は利便性を
考え都内のマンション住まいとなります。

やがて、夕子は高校に入学します。あらゆるプライベートな
事柄も夕子の一挙手一投足もワイドショーや週刊誌の話題に・・・

『夢を与える』という題は、作者が「違和感を覚えた言葉」「高飛車な
言葉」という印象を持ち、文中でもたびたび夕子の口から、あるいは
夕子の周りの大人たちの口から出ます。しかしその言葉は夕子の
本心ではなく、取り繕い的な、なんとなく聞こえの良いフレーズ
なのです。

確かに、プロ野球選手や俳優がこの言葉を口にすると、なんとなく
鼻持ちならないなこいつは。という気持ちになってしまいますね。

読み終わって感じたことは、「距離感」が絶妙というか、作者と登場
人物の距離感が、変に感情移入しておらず、かといって完全に他人事
でもなく、あと登場人物どうしの距離感もいい具合の均衡を保ってい
ます。


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