晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本甲士 『あたり(魚信)』

2010-03-12 | 日本人作家 や
去年、著者のデビュー作で横溝正史賞受賞作「ノーペイン・ノーゲイン」
を読んで、意外で斬新な構成と旧式の密室トリックを融合させるという
作品で、けっこう楽しめました。

『あたり(魚信)』とは、釣りで魚が餌に食いついたときに浮きが
ちょんちょんと引っぱられる手応え。これをタイトルにするという
わけで、川魚釣りの短編オムニバスです。
ある地方都市に流れる支流は、工業排水などが流れ込まずに清流の
状態を保っている貴重な川があり、そこにはさまざまな人たちが釣り
を楽しみに竿を垂れます。
この地域には「奇跡を信じたければ釣りをするがいい」という言い伝え
があり、その昔、隠れキリシタン狩りから逃れてきた人たちが隠れ住み、
飢えをしのぐために魚釣りをして、それが地元の村人に見つかったの
ですが、その時代の地元民たちは網などの漁しか知らなかったので、
竿と糸と針を使った魚釣りというのを教えてもらうことになり、この
地域で匿ってもらうことになったのです。

そんな言い伝えが、悩みを持った人たちにとっての救いとなり、まさに
小さな「奇跡」が起こるのです。いや、何もしなければ奇跡なんて訪れ
ません。彼ら彼女らが何かしら行動することによって、その行動のうち
のひとつが良い事になり、やがて人生は好転していくのでしょう。
釣りを介して、失われてしまった、本来人々があたりまえに持っていた
はずのものと出会います。

オイカワ、雷魚、うなぎ、鮎、たなご、真鮒といった川魚にまつわる
話、それらの生態や釣り方などが詳しく説明されていて、正直それまで
川魚釣りに興味がなかったのですが、「奇跡」がほしいかどうかは別に
して、ちょっと出かけてみようかな、なんて気になりました。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« レイ・ブラッドベリ 『火星... | トップ | 夏目漱石 『道草』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日本人作家 や」カテゴリの最新記事