晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

池井戸潤 『下町ロケット ガウディ計画』

2020-07-24 | 日本人作家 あ
なんだかんだいって池井戸潤さんの作品、けっこう読んでいるのですが、ミーハーと思われるのもアレなので一応言い訳させていただくと、こちとらデビュー作の江戸川乱歩受賞作「果つる底なき」を読んで以降まったく読まず、倍返しだなんだとドラマでブームになっていたころにも読まずにいたので、世間でいうところのミーハーではありませんのであしからず。

さて、この作品は「下町ロケット」の続編にあたります。下町の町工場「佃製作所」が会社の技術に関して日本を代表する大企業を相手に一歩も引かないで交渉するという、まあそんな感じの話で、今作も会社がピンチの状態からはじまります。

佃製作所のもとに、試作品の話が持ち込まれます。開発にもお金はかかるわけでして、採用されれば大量生産といった流れにならないと会社としてもキツイところ。ところが、取引先の会社からは佃製作所にとって不利な条件しか提示してきません。「他にやってくれるところがあるのでね」これを言われたら中小企業は参ります。場合によっては赤字覚悟で取引を継続なんてこともあったりするのですが、今回のケースは取引先の態度がどうにも腹に据えかねて、社長は取引を断ります。さらに、今度はロケットエンジンの部品でも取引先から「コンペで」と言われます。先述のも、ロケットエンジンも、同じ会社に「してやられた」ようで、その会社とは新社長がNASAがどうたらこうたら。

ある日のこと。佃製作所の元従業員から連絡が。話は、医療機器の開発で、心臓の人工弁。これが完成すれば多くの患者の命が救えるとても尊い仕事ではありますが、医療機器の製造は医療事故の賠償金といったリスクも大きく、潤沢な資金など無い町工場は手を出しづらいのです。

社長は、話を持ってきた元従業員と、この「計画」に関わっている福井にある工場を訪ね、そこの社長の情熱に動かされ・・・

ところが、待ち受けていたのは、前途多難の四文字。挙句、佃製作所の従業員があろうことかライバル企業に転職。

この「計画」に関わるお医者さんが出てきますが、またこちらも医学界のドロドロした模様に巻き込まれ・・・

近江商人の商売哲学に「三方よし」というのがあります。「客よし、店よし、世間よし」、買った人も売った人も満足し、世の中にとっても良い商売をしなければならない、というもの。しかしここ近年の「ビジネス」では、金儲けこそ絶対、騙される方が悪い、といった風潮が目立ちます。
池井戸潤さんの作品は、全部が全部というわけではありませんが、この「三方よし」の哲学を持ってる側が最終的に報われる、報われなければおかしい、というスタンスがあると思います。それがつまり「読後のスッキリ感」があるのでしょう。

そういえば、この作品に登場する「元NASA」という人物が出てくるのですが、「NASAが開発した」と書けば「おー、すげー」となるもので、中にはマユツバどころか99.9%ウソだろといったものまでありましたね。モザイクが消せる装置もたしかNASAが開発したんじゃなかったでしたっけ。あれ本当に消えるんですかね。



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