晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

佐伯泰英 『夏目影二郎始末旅(四)妖怪狩り』

2021-12-20 | 日本人作家 さ

先日スマホを買い替えたのですが、料金プランを変更しまして、データ通信を使った分だけ料金が増えていくシステムでして、まあ使うといっても自宅にも職場にもWifiがありますし、出先で使うといってもコンビニとかカフェに寄ればWifiありますし、一カ月のデータ通信なんて1GBちょっと、どんなに使っても2GB以下で済んじゃうので、だいぶお安くなりました。ありがたいですね。

以上、家計を見直そう。

 

さて、夏目影二郎始末旅シリーズ。サブタイトルが『妖怪狩り』、英語にするとモンスターハンター。この作品の初版が2001年、ずいぶん時代を先取りしましたね、といいたいところですが、人間じゃない敵は出てきません。よく政治の世界で「妖怪」と例えられる大物政治家がいますね。あれです。

影二郎は、実の父である常盤豊後守秀信の屋敷へ向かいます。影二郎にとっては実母が亡くなって引き取られて義母にいびられて飛び出して放蕩無頼の道に進むまで住んでいた家です。着いて早々、秀信は「ついてまいれ」と隣の家へ。隣家というのは伊豆、韮山代官、江川太郎左衛門英龍の屋敷。前に影二郎が伊豆に始末旅に出かけた際に世話になっています。そこで、英龍は影二郎に幕府の目付、鳥居耀蔵を知っているかと尋ねます。次に「蛮学社は聞いたことがあるか」と質問。

この当時、世の中的には「天保の大飢饉」があって、大塩平八郎の乱などが起きました。輸出が禁止されていた日本地図が国外に持ち出されそうになった「シーボルト事件」や、日本人漂流者を帰国させるついでに開港と貿易をもくろんでいたアメリカの船に大砲をぶっ放した「モリソン号事件」などがあって、幕府体制は崩壊寸前、一方江戸では蘭学が大ブームということで、鎖国政策に疑問を持ち始める人たちが現れ、幕府はこのような風潮を厳しく取り締まることにして起きたのが「蛮社の獄」。

「尚歯会」といって、もともと知識交換の場、フランスでいうサロンのような集まりがあったのですが、その会の主な参加者である渡辺崋山、高野長英などが捕まって処罰を受けます。この言論弾圧事件の首謀者が、幕臣の目付、鳥居耀蔵だったのです。鳥居は江戸幕府内の学問を担当していた儒学・朱子学の林家の出身で、外国文化は国を乱すといったスタンスで徹底的に取り締まり、渡辺崋山と交流のあった英龍にまで探索の手が。江川英龍といえばのちに反射炉を築いたことで有名ですが、韮山代官の江川家といえば立派な大名。もはや常軌を逸している鳥居に対して身の危険を感じた英龍は伊豆に引きこもることに。

そんな中、江戸府内で国定忠治が押し込み強盗をやったと大騒ぎに。家族や奉公人が惨殺された中、生き残った小僧が、犯人グループが「国定忠治一家だ」と名乗ったのを聞いたというのですが、どう考えても怪しいので、影二郎は北関東に潜伏している国定忠治本人に確認を取るため会いに行くことに。向かった先は、関東と奥州の会津を結ぶ会津西街道、またの名を南山御蔵入。この地域は米が取れない山地で、年貢米の代わりに生産できるものといえば、蕎麦と漆。その漆ですが、どうやら幕府に収めていない「隠し漆」があるとのことで、鳥居らはそれに目をつけているらしいのですが・・・

 

この鳥居耀蔵、実在の幕臣でして、蛮社の獄の首謀者までは本当なのですが、実父の林述斎(耀蔵は鳥居家に養子に出された)は蘭学者と交流があり、モリソン号事件の際には強硬派に対して漂流者を受け入れようとしたり、耀蔵自身もある程度は蘭学の必要性を認めていたそうです。ただ、かなり評判が悪かったのは事実でして、鳥居甲斐守耀蔵の(かいのかみ)と(ようぞう)の頭を取って「ようかい(妖怪)」と呼ばれたり、「マムシ」などとも呼ばれるくらい嫌われていたそうです。

ちょっとだけですが、遠山景元が登場します。遠山の金さんですね。ちなみに、遠山景元の隠居後の住まいは長谷川平蔵の屋敷だったところ。

 


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