晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

帚木蓬生 『閉鎖病棟』

2012-02-22 | 日本人作家 は
前から、本屋さんや他の小説のあとがきなどでこの作家さんの
名前を目にしてきたのですが、何と読むか分からず、かといって
調べて知ろうともせずにきたのですが、このたびようやく読み方
がわかりました(ははきぎ、ほうせい)。

推理小説の新人賞で高村薫と最終候補で競ったり、国際アクション
小説で直木賞の候補に残ったりと、イメージとしては服部真澄や
真保裕一のようなアクションミステリ小説なのかなあと読みはじめ
たら全く違い、現役(当時?)の精神科医である作者の描く病院内部
の話で、ちょっと戸惑いました。

由紀という学生は、年齢を偽り、保険証も持たずに産婦人科で中絶を
頼みますが、医者にはバレてしまい、相手とよく話してからまた来な
さいと言われます。が、どうやら複雑な様子。

また年齢を偽り、コンビニでバイトをはじめますが手術費用がたまる
までに時間がかかりすぎ、由紀は、街中の男をつかまえて体を売ろう
とし、ホテルに行って男がシャワーを浴びている隙に財布から金を
盗んで逃げます。

それから舞台も時代も内容も変わり、秀丸という男の子の話に。終戦
で父が片手が不自由の状態で帰ってきて、それまで大工職人だった父
ですが仕事ができず、軍人恩給を申請しますが、戦地で負傷したわけ
ではないらしく、証拠が見つからず、だんだんと偏執病的になり、と
うとう役場の前の木で首を吊ってしまいます。

またまた話が変わって、耳の不自由な昭八が登場。姉の息子、昭八に
とっては甥っ子の遊び相手となり、しょっちゅう山や川にでかけます。
しかしある日、溜池に遊びにいったときに甥っ子が溺れて危うく死に
かけます。姉夫婦は、もう遊ばないでと昭八と甥を引き離します。
昭八はその夜、家に火をつけて、逃げ出します。

といった3人の話から、九州の有名な神社の近くという設定で、精神
病院での話になります。この病院は、通院もできるのですが、中には
事件を起こして精神鑑定で起訴されなかった人たちが「入院」してい
ます。
この病院の中で、覚せい剤中毒で入院していた元暴力団員が殺され、
患者が逮捕され・・・

ここに、秀丸、昭八、そして由紀が登場するわけですが、この病院内
の描き方は、悲壮感もなく、またユーモラスというわけでもなく、
彼らを「人間」として描くことに、落ち着いた言葉遣いの奥に強い
主張があるように思えます。

病院の近くに短大があるのですが、チュウさんという患者が一時帰宅
するときに、学生たちが自分を嘲笑していると気づきます。
「あの白亜の校舎で、彼女たちは何を学んでいるのだろう」という
チュウさんのつぶやきは、胸に突き刺さりました。

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2 コメント

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Unknown (ロビタ)
2012-02-23 15:30:20
けん さん

TBありがとうございますー

こちらこそよろしくです(^0^)ノ

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Unknown (けん)
2012-02-23 09:49:44
TBさせていただきました。
またよろしくです♪
返信する

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