晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

フレデリック・フォーサイス 『マンハッタンの怪人』

2010-09-23 | 海外作家 ハ
「オペラ座の怪人」といえば、ミュージカルの不朽の名作、しかしそれは、
天才作曲家、アンドリュー・ロイド・ウェバーが掘り起こし、泥を洗い落とし、
研磨してできたもので、原作が世に出た1911年、それなりに話題には
なったもののすぐに下火となり、そしてその後、海を渡ってアメリカで
映画として話題になります。ところがその内容はフランケンシュタインや
ドラキュラといった恐怖キャラとしての「怪人」扱いとなり、本筋の悲恋は
脇に追いやられた格好となってしまったのです。

さらに、フォーサイスが「続編」を書くにあたって、原作の「拙い」部分を
幾つか指摘。原作を読んだ方なら、ああ、だから読みづらかったのか、と
よく分かる解説です。

そして、登場人物の設定をやや変更、原作の不足分を補足しつつ、舞台の
本番中に主演の女優を誘拐、オペラ座の地下に連れ去るも、追っ手が迫り、
女優クリスティーヌは怪人からの愛を拒否、怪人エリク・ムルハイムは
まんまと逃げ遂せて・・・からの話の続き。

元オペラ座バレエ監督のアントワネット・ジリー(原作では掃除婦)は、自分
の死期が迫っていると悟り、神父を呼び、懺悔をします。
まだ娘も小さかった頃、見世物小屋で酷い扱いをうけていた少年がいて、
見るにみかねて、夜中にその少年を小屋から連れ出します。ジリーにとっては
正義感の行為であったのですが、じっさいには「商品」を盗んだことになる
のです。
この行為に関しては、神父は罪ではないと赦されます。
顔半分が変形していたこの少年は、ジリーの家で生まれてはじめてという入浴
をさせてもらい、怪我の治療もされ、栄養たっぷりの食べ物も与えられます。
そしてジリーはこの少年をオペラ座へと連れてゆくのですが、ここで少年は
自分の住処を見つけたとばかりに、オペラ座の複雑に入り組んだ地下に住み着く
ことになります。
そこで、オペラに関する蔵書を読みふけり、もともとサーカス団に所属していた
という身軽さと、父親譲りの大工の技術で、地下を少年の帝国へと変えていった
のです。

そう、この少年こそ、その後オペラ座に伝わる「幽霊伝説」つまり怪人の正体
だったのです。
そして、女優と恋人である子爵を誘拐し、逃げ遂せたのは、じつはそこにジリー
が関わっていたのです。
エリクはその後、アメリカへと渡り、さながら無法地帯だったニューヨークで
才覚と知恵でぐんぐんと金持ちへと成長し、そしてついにはマンハッタン指折り
の富豪となります。

ジリーは、手紙をエリクに渡してほしいと弁護士に頼みます。弁護士は地元の
新聞記者と知り合い、エリクの手元に渡ります。それを読み、エリクは衝撃を
受けるのです。

オペラ座の事件から13年が経過、今やヨーロッパじゅうで有名となったクリス
ティーヌ・ド・シャニーは、息子ピエールと大西洋を渡り、ニューヨークの
オペラハウスで公演を行うことに・・・

「ロマンスとスリルを新たに加え、怪人をかくも魅惑的な人物に仕立て上げた」
とアンドリュー・ロイド・ウェバーに言わしめるほどの素晴らしい作品です。

そういえば、ジェームス・ボンドの新シリーズを、ジェフリー・ディーヴァー
が書くことになるというニュースが数ヶ月前に流れてきましたが、うーん、
個人的にはフォーサイスに書いてほしかった・・・
コメント (2)
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