晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

スティーヴン・キング 『ファイアスターター』

2010-09-03 | 海外作家 カ
作家の宮部みゆきが「私の小説の師匠」と敬意をはらっているキングの、
かなり初期の作品である『ファイアスターター』は、念力放火(パイロキネ
シス)の能力を持って生まれたある少女の物語なのですが、この念力放火、
宮部みゆきも「燔祭」そして続編の「クロスファイア」で、念力で人や者に
火を放つ能力を持つ人の作品があります。

別に「パクった」がどうの、ということを論じたいわけではなく、これを
テーマにすると、自分の持つ特殊な「能力」は、良いことなのか悪いこと
なのか苦悩する、という点での共通はあるのですが、定石の、この「能力」
を知った“組織”というのが出てくるのですが、これが設定の舞台によって
違ってくるんですね。

アメリカでは、まあこういう場合のヒール(悪い側)は大抵CIAが絡んで
きます。国家の安全を守るためには、数人の市民の犠牲は仕方ない、
とする国家側のスタンスは、すなわち、自分の身は自分で守るとする、
アメリカならではの「描き方」があるのですが、ところが日本の場合、
表立ってこういう諜報や陰の仕事をする存在というのは、いちおう、
内調や公安、あるいは陸幕2部といった、諜報組織があるにはありますが、
これらが主人公の命を狙うような小説は、まったく無いとは断言できません
が、あまり多くはありません。

ですので、「クロスファイア」では、念力放火やその他超能力の持ち主を
探し集めて、ゆくゆくは何かしらを企む「組織」の存在は、ほのめかす程度
で、あまり明らかにはしていません。

ニューヨークの片隅で、歩き続ける父娘。もう疲れたと娘。しかし父親は
足を止めません。この父アンディの銀行口座に入っていた預金は知らない
間に引き出されてしまい、娘チャーリーの居場所が突き止められるのも
時間の問題。
しかし、この父娘は、1年近く逃亡生活を続けて、また逃げる先はどこへ
決めていいものやら分からず、タクシーに乗り込みます。
はじめは空港へ行ってくれと頼むアンディ。いや、やっぱりオールバニー
へやってくれと行き先の変更を要求。
運転手は、そんな遠いところは無理と言うのですが、アンディが運転手の
頭を軽く「押し」て、オールバニーへ向かわせます・・・

アンディは12年前、大学生だったときに、友人の紹介で、ある医療実験の
被験者のアルバイトの話を持ちかけられます。ある薬を注射するだけで、
200ドルがもらえるのです。
そこに同じく被験者として来ていたヴィッキーという女性にアンディは一目ぼれ。
しかしその実験で、注射をされた他の被験者は、自分で自分の眼をくり抜こうと
したり、暴れて飛び降り自殺をしたりと、これはかなり危険な薬物を投与された
とアンディとヴィッキーは不審がりますが、しかし不思議とふたりにはそんな
兆候は見られませんでした。

その後、ふたりは結婚。そして、ひとり娘のチャーリーをもうけます。
そのチャーリーは、物心つかない頃から、ある「現象」を周りに起こすのです。
何かで泣いたりすると、その近辺の物が燃え出すというもので、両親はすぐに
あの実験の後遺症か何かが娘にあると悟ります。
アンディは、他人の意識下に「命令」を送ることができ(これを「押す」とアンディ
は呼んでいる)、そして妻ヴィッキーはというと、遠くの物を動かせる能力を
あの大学での実験後に身に付けてしまったのです。

そして娘チャーリーは、念力放火(パイロキネシス)の能力が、突然変異で備わって
しまったのでした。

それから、ある男たちがこの家族を追いまわします。そして妻ヴィッキーは、
無残な姿で息をしていない状態で発見され・・・
やがて、娘が誘拐されたことを知るアンディ。なんとか追いついて、誘拐した
男を「押し」て、娘を連れ戻し、ここからふたりは追っ手から逃れる生活がはじ
まったのです。

12年前に大学で行った実験は、CIAの下部組織《店(ショップ)》といって、
超能力を極秘開発しようとしていたのです。
被験者のうち、なにも異変の無かったアンディとヴィッキーも、しばらくは
《店》の監視下にあったのですが、このふたりの間に生まれた娘が念力放火の
持ち主であることを知って・・・

そしてラスト。ちょっとだけネタバレですが、娘チャーリーが、国家の悪事を
公にしようと、報道各社に手紙を出そうとして、図書館にいた男に聞いて、ある
会社へと向かうのですが、「ええ、そこ?」と、まあちょっとだけクスリとして
しまいました。

コメント (2)
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