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晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

末浦広海 『訣別の森』

2009-11-20 | 日本人作家 さ
『訣別の森』は、第54回江戸川乱歩賞受賞作品で、芥川・直木賞
はベテランや売れっ子作家にも門戸を拡げてもはや名誉賞となりつ
つある感がありますが、乱歩賞は推理小説という縛りこそあれ、新
人の登竜門としては最高峰なのでは。

元自衛隊ヘリコプターパイロットの槇村は、現在は民間会社で、北
海道の東部、北見市の総合病院にあるドクターヘリのパイロットとし
て働いており、いつものように出動要請があり、現場に急行するも、
バイクで転倒事故を起こし、意識不明の重体であった傷病者はすぐ
に意識が戻り、キャンセルとなってしまいます。
何事もなく帰還することとなったヘリですが、帰途に同乗していたド
クターは、山中にヘリコプターが墜落しているのを発見します。

事故機の付近に着陸し、そのヘリコプターは地元新聞社所有だと
判明、生存者の確認に急ぎます。
中には、軽装の男性と、フライトスーツの女性の二名が血まみれで
倒れており、機体から出して、応急処置をしますが、槇村の目に入
った女性パイロットは自衛隊時代のかつての部下だったのです。

ここから、このパイロットが失踪、そして槇村の上司も突然会社を
辞職、さらに物語の合間に書かれている謎のアウトロー的な人たち
の不気味な会話・・・。
正直いって、物語の途中まで、槇村という主人公を三人称的視点で
描いているのですが、槇村の心情を描いていると思いきや別の登場
人物の心情描写であったりして、ちょっと混乱してしまいました。
が、読み進めていくうちにどんどん内容に引き込まれました。

乱歩賞受賞作品のもうひとつの楽しみは、うしろにある選考委員の
選評を読むこと。プロの作家である五名の委員は、どの部分を評価
して、どの部分にダメ出しをしているのかが大変興味深く、さすがプ
ロだなあと敬服、舌を巻くこともあり、また自分なりの評価が選考委
員と近かったときにちょっとほくそえんでみたり。