晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

T・ジェファーソン・パーカー 『ブラックウォーター』

2009-11-17 | 海外作家 ハ
作家や作品の前情報が無い場合、表紙裏に簡単にあらすじや
作者の経歴(受賞歴)などが掲載されていて、『ブラックウォータ
ー』の著者T・ジェファーソン・パーカーは、デビュー作『サイレント
・ジョー』という作品でアメリカ探偵作家クラブ賞を受賞しており、
最新傑作だと書かれているのでさっそく読んでみたのですが、な
んだか後味すっきりとしないというか、構成が破綻してるんじゃな
いのと訝ってみたり。

というのも、文中に出てくる「一年前の事件(出来事)」の詳細は
結局最後まで出てこないし、主人公の巡査部長マーシの亡夫の
話題も曖昧なまま。
で、読み終わって、うしろの訳者あとがきを読んでようやく気づい
たのですが、『ブラックウォーター』はシリーズ三作目なんだそう
で、しかもこの作品が初版された時点では、シリーズ一作目と
二作目はまだ日本で発売されていなかったのです。
そんなばかな、道理でわかりづらいはずだわ、と独りごちて、あと
がきに書かれていた前作、前々作のあらすじを読んでようやく判然
としなかったいろいろな部分が納得。

アメリカ、カリフォルニア州オレンジ郡の保安官補、アーチーは妻の
グウェンとともに帰宅、睡眠中に下の階からガラスの割れる音がし、
心配する妻をよそにアーチーは調べに向かいます。
こぶし大の石が窓ガラスを破って室内に転がっており、どうせ近所の
悪ガキか、前に逮捕して自分に恨みを持った輩の仕業だろうと思い、
庭に出てみると、アーチーはオレンジの眩しい光に目が眩み・・・

オレンジ郡保安官事務所殺人課巡査部長のマーシのもとに、アーチー
と妻が自宅で撃たれているとの情報が入り、現場に駆けつけます。
妻はバスルームで銃弾をあびて死亡、アーチーは頭を撃たれて、庭で
倒れていて意識不明の重体。
現場検証と妻の死体の検死の結果、アーチーが妻を銃殺したあとに
庭に出て自分で頭を撃って自殺という線が濃厚に。
しかしアーチーは自殺などするような男ではないとマーシは思い、
相棒のポールとともに事件の真相を調べます。

検察は夫の妻殺害そして自殺説で起訴したがっており、マスコミも
保安官の失態を報道したくて真相を知りたがります。
そもそも一年前、ある売春婦が殺害されたことに端を発し、芋づる
式にスキャンダルが発覚し、信頼は失墜。しかもそれを暴いたのが
マーシで、同僚の中にはマーシを敵視する者も多いのです。

そんな中、アーチーの意識が戻るのですが、事件当日の記憶は曖昧。
しかも自分が妻殺害の容疑がかけられていると知り、アーチーは容態
がある程度良くなるや、勝手に退院し、行方をくらませてしまい…

悲しい過去に心が支配されるも、家族の愛に支えられ、かろうじて日々
を送るマーシ。痛々しいほどです。
息子がとても愛嬌のあるキャラクターで、陰惨な事件のなかで一服の
清涼感を与えてくれます。
コメント
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