晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ディーン・クーンツ 『コールド・ファイア』

2009-11-27 | 海外作家 カ
本に付いていた帯には「これまでのクーンツ作品と変わった」
とかそういうニュアンスの文が載っていて、いよいよクーンツ
ハッピーエンドじゃない作品を書いたのか、と読んだのですが、
良くも悪くも変わらず大団円で終わり。じゃあどこが「変わった」
のかというと、微妙なニュアンスというか(訳者の功績でもある)
登場人物の心情や情景描写の際に「○○のように~」という例
えのチョイスのセンスが良いというか、破顔まではいかなくとも
ちょっと心がくすぐられるユーモアがあるのです。

あと印象に残ったそれまでの作品との違いというと、『コールド・
ファイア』は、どちらかというとじっくり読ませるタイプ。
クーンツは、読み始めたら止まらない、展開の速さと構成の巧さ
で文中にぐいぐい引き込まれる作品が多いのですが、この作品
は一頁一頁をしっかりと心に刻むように読ませます。

オレゴン在住の新聞記者ホリーは、ある日、取材の帰りに驚くべ
き出来事を目の当たりにします。それは男が突然道路に飛び出し
車に轢かれそうな少年を救うのです。まるで、これから事故が起こ
ることを予見していたかのように。
ホリーは少年を助けた男に取材を試みようとしますが、男はジム
と名乗るだけで、南カリフォルニア在住という以外は素性を明かし
てくれません。

ジムは、いつものように頭の中に何者かが「命綱(ライフライン)」
と語りかけてきて、出かけてゆきます。今度の行き先はモハヴェ
砂漠。ジムが到着したときには、車内に男が銃で撃たれて瀕死
状態で、最後の力を振り絞り、妻と娘の名前を口にします。
砂漠を通る道路を急ぐと、一台のキャンピングカーが停まってい
ます。ジムは、さきほどの男の口にした妻と娘がその中にいる
ことを知っていて、誘拐した暴漢を撃ち殺し、ふたりを助け出します。

一方ホリーはジムのことが頭から離れず、南カリフォルニアまで
探しに行きます。家を見つけたのですが、ジムは出かけるところ
で、向かった先は空港。後をつけていたホリーもジムと同じ便に
乗ります。ジムはホリーの一列前の親子に親しげに話しかけ、
親子をジムの席の近くに移動させようとしたときにホリーと目が合
います。
ホリーはジムに問い詰めると、ジムは、この飛行機は墜落するので
この親子を救いに来たというのですが・・・

ジムとホリーは不気味な夢を、しかも同じ夢を見るようになり、それが
ジムの予知能力と関係があるらしいのですが、一体なにが夢に現れ
るのか・・・

サスペンス、SF、ファンタジー、家族愛、ロマンス、どのジャンル
も網羅されていて、それでいて話が複雑にはならないあたりが
進行の上手さとでもいうのでしょうか。
これにマイクル・クライトンのような現代社会に警鐘を鳴らす問題
提起でもあればさらに重厚感が増すのですが。
ただ、そうすると良くも悪くもクーンツ作品のライトタッチな読みや
すさが無くなるんですよねえ・・・

コメント
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