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晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

石田 衣良 『4TEEN』

2009-07-25 | 日本人作家 あ
著者のデビュー作「池袋ウエストゲートパーク」では、池袋の
カラーギャングの抗争といった、大都会東京のダークサイドを
描き、少年たちは少年たちなりに精いっぱい生きている様子
が面白いのですが、本作「4TEEN」も同じ東京、とはいえど、
こちらは月島が舞台、14歳の中学生4人組がああでもない
こうでもないと考えて行動する話で、この時期をすでに送った
大人にとってはガラクタのような時間やモノでも、今まさにこ
の年代を過ごす子どもたちにとっては、大切な宝物であり、
きっと十年二十年先でも語るであろう思い出に「なりうる」と
信じている、そんなビタースイートな共通点があります。

優等生のジュン、デブで大食いなダイ、若年性老化症という
病気のナオト、そして「ぼく」の同じ中学に通う4人組が、さま
ざまなことに悩み、苦しみ、笑い、喜び、地元月島を自転車
で走りまわります。

月島という土地(島)は、対岸に築地、銀座といった抜群の
ロケーションで、それこそリバーサイドでアーバンライフを勤
しむための高級マンションが乱立していますが、それでも、
佃界隈は今でも100年前から変わってないような下町情緒
を残し、もんじゃ焼きのお店が軒を連ねている、新旧入り交
ざった「トーキョー」がまさに顕著です。

4人組は中学生なので交通手段はもっぱら自転車なのです
が、ポケットには携帯電話と、なんだかアンバランス。
もっとも、大人びてみたりそれでもやっぱり子供だったりする
この年代は人間としてアンバランスな年代。

「ガキンチョ」がメインの物語は、大抵が読む対象は大人で、
甘酸っぱい青春群像をある程度期待するものですが、この
作品はいい意味で甘酸っぱくはありません。

著者はアンバランスをいかにバランス良く描ききるか、これ
に長けているなあ、と感じました。