晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

高杉良 『金融腐食列島』

2009-07-12 | 日本人作家 た
ちょっと昔、海外で働いていた時に、お世話になっていた方から
借りて読んだのが、清水一行の経済小説。仕事で疲れて家に
帰ってまた仕事の話なんて余計疲れるだけだろうと思っていた
のですが、読んでみたらこれが面白い。

大企業や大銀行、世界をまたにかける投資会社やヘッジファンド
なんて、ある意味、妖怪大戦争。

そんな日本の大銀行でバブルの後始末に奔走する行員を描いた
「金融腐食列島」は、ときに主人公やその周りの人間関係に笑い、
悲しみ、怒り、ときに無責任体質な政治、官僚、財界に辟易し、読
んでいる最中、ずっと重低音サウンドに包まれているような、肩に
重いなにかがのしかかっているような気分。

都銀大手の協立銀行の支店勤務竹中は、ある日突然本店異動を
命ぜられ、総務部「渉外班」で総会屋対策にさせられるのかとため
息を漏らします。
しかしその異動の裏には、同行の同期入社の現在MOF(モフ)担
杉本の画策がありました。
MOF(モフ)担とは、ミニストリーオブファイナンス、大蔵省の出入り
担当で、都銀のエリートというか官僚でいえばキャリア。
その杉本から聞かされたのが、会長の娘がある男と不倫関係にあ
って、その男とは“その筋”と思われ、その筋の関係者につけ込まれ
ないようにしてほしいとのこと。そしてこの調査は、会長秘書役でか
なりの切れ者ともうわさされる鈴木からの依頼。

しかし調査をしてみると、娘の相手の男は暴力団関係者ではなく、
かつて横浜支店に融資を断られて嫌がらせをしたくらい。しかしどう
にも後ろ暗い人物で、挙句この男は現在経営しているブライダル会
社に10億の融資を頼んできます。
これで娘と別れることを条件に融資してしまいますが、別れるどころ
かより親密に、しかも会長とも仲良くなってしまいます。

とりあえず総務部での影の任務は終わり、本来の総務部での勤務
がはじまり、総会対策に翻弄します。
そんな中、竹中はある大物総会屋に気に入られ、その後たびたび
来る小さな脅しやゴシップ脅迫などその大物総会屋に始末してもら
うのです。

総務部からほかの部署に異動しますが、そこでの勤務はバブルの
後始末。そこにつけ入る暴力団関係者からの執拗な嫌がらせに耐え
難きを耐え・・・

バブルの発生から崩壊、そして住専などの後処理問題がよく分かる
ように、時の政治家も実名で登場し、ちゃんと解説されていて、あの
時代は日本全体が浮き足立って拝金主義に成り果てていたっけなあ、
と巨大ディスコのお立ち台で踊り狂うギャルの映像とともに頭に浮か
んできます。
しかしそれにしても、バブル崩壊から15年経ちますが、いまだにちゃん
と総括されていないのは、この国がちゃんと「あの病気」から完治してい
ないということですね。
コメント
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