晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

新保裕一 『真夜中の神話』

2009-07-01 | 日本人作家 さ
だいぶ前にテレビで、日本の小説を海外に紹介するといった番組
がありまして、その中に新保裕一「ホワイトアウト」も翻訳されると
あって、ちょっと嬉しくなったものです。

この人の息つかせぬスピード感と臨場感のアクションエンタテイン
メント作品は海外の有名作家にひけをとらないと思っていたのです。

「真夜中の神話」は、インドネシアのカリマンタン島に残る吸血鬼伝
説の話。事故で夫と一人娘を失い、勤めていた大学の薬学研究室
を辞めてアニマルセラピーの研究をはじめた晃子は、インドネシアで
イルカの介在療法をしている所に行くために飛行機で向かおうとしま
すが、上空で爆発して墜落します。
奇跡的に助かった晃子は、病院とは呼べない粗末な建物で寝かされ、
治療だといわれて連れていかれたのが洞窟。そこには少女がおり、
歌を唄うのですが、その歌を聴いているうちに全身の痛みがやわらぎ
夢心地になってゆくのです。
なんとか歩けるまでに回復した晃子は山のふもとまで下りて、自分は
事故のあった飛行機に乗っていた日本人だとジャカルタに連絡。
しかし、ふもとの村人や病院の医者は、晃子が山奥の吸血鬼の村から
来たと恐れている様子。ホテルでも宿泊拒否され、村にある教会に
泊まらせてもらうことになり、牧師に山奥の吸血鬼伝説を教えてもらい
ます。

一方ジャカルタで、華僑系の老人が惨殺死体で発見されます。この
老人は3年前に晃子と同じく山奥の村で少女の歌声で治療を受けた
のでした。さらに別の場所でこの山奥の村出身と思われる男も、老人
と同じく心臓を杭で刺されて死んでいるのが発見されます。

飛行機の墜落事故によって明るみとなった吸血鬼伝説の村とは。その
村の不思議な力の歌声を持つ少女とは。この村に関係した人が次々と
殺されていくのは・・・

物語の重要人物として、ヨーロッパの通信社所属のイタリア人カメラマン
と教会の牧師が出てくるのですが、彼らがなぜインドネシアまで来たのか
その素性がぼんやりと判明するのですが、これは想像の域で断定ではあ
りません。おそらく、中世ヨーロッパの吸血鬼伝説がアジアに渡っていまだ
に残っているという神秘的なテーマなので、ここをはっきりさせずに曖昧な
ままで締めくくったほうが神秘さが増すという演出?
だからといって物語が不完全燃焼だったというわけではありませんでしたが。
コメント
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