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Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

MSI Research Priorities

2008-05-13 23:57:23 | Weblog

米国の Marketing Science Institute が2008~2010年の重点研究課題(Research Priorities)を発表した。その骨子は以下の通りだ。

  1. Accountability and ROI of Marketing Expenditures
  2. Understanding Consumer/Customer Behavior
  3. New Approaches to Generating Customer Insights
  4. Innovation
  5. Marketing Strategy
  6. New Media

このなかで唯一具体的なのが 1 である。前回の重点課題にも入っていたというから,アカウンタビリティと ROI の問題は,いぜんとして未解決だということだろうか。日本でも企業はそうした問題意識を持っているはずだが,学界は,必ずしもそうではないように思える。米国の「流行」に敏感なはずのに,なぜだろう?

ん?と思わせるのが 3 だ。ボディコピーを読むと,まずエスノグラフィーが例にあげられている。ところが次に virtual/simulated shopping approaches なるものが出てくる。これって仮想空間上での模擬購買のことだろうか?(10年ぐらい前にも,ゴーグルをかぶって3D仮想スーパーで買物するシステムの売り込みがあったなあ・・・)

他は当たり前なテーマばかり。サービス・イノベーションは,かろうじて 4 に顔を出す。しかし,以前課題にあげられていたはずの really-new product というテーマはそこに入っていない。課題から消えたという点では,ブランドも同じだ。米国のマーケティング研究者は,こうしたテーマをもはや重要とは思っていないのだろうか・・・。

6.の New Media というのは,とりあえずは CGM やモバイルのことであるが,直近の最大の問題は What is the role of the "old" media such as TV, print, and radio in the new communications environment? だという。つまり,クロスメディアのことだが,そのうち画期的な研究が出てくるのかどうか,おおいに気になる。

いずれにしろ,MSI のように研究の優先度を発表し,それに基づき研究をサポートしていくという仕組みは,研究の生産性を向上させるのに貢献する反面,研究の多様性を殺すおそれもある。もっとも,そうした機関のない日本のマーケティング学界で,多様な研究が花開いているかというと,いささか心許ない。

こういう重点課題のリストを,真にクリエイティブな研究をするためのネガティブ・リストとして読むという方法もある。自分自身の research priorities を発表したいところだが,あまりにそれと程遠い現実を省みて,当分控えることにする。


本もまた欲望の代償

2008-05-12 20:59:36 | Weblog

今日は研究室で粛々と仕事・・・ということにしておこう。 届いたばかりの『マーケティング・ジャーナル』No.108でとりわけ関心を惹いたのが,繁桝江里,小林哲郎,池田謙一,宮田加久子「消費者行動における「他者」の多面性を測定する」である。そこで用いられているウェブ上でスノーボーリング調査を行うというアプローチは,消費者間相互作用の研究で今後普及していくように思う。自分でもぜひチャレンジしてみたいのだが・・・。

同じ号の巻頭論文,久保田進彦,芳賀康浩「マーケティング研究におけるネットワーク・パースペクティブ」は,社会ネットワーク分析のマーケティングへの応用に関する包括的なサーベイだ。最新の研究までカバーしており,今後,消費者間ネットワークの研究で何か新しいことを主張したいなら,ここにあがっていないテーマを探すべきだろう。 何か残っているかどうか・・・。

続いて注文していた専門書がいくつか届く。阿部先生に教えていただいた Blattberg, Kim and Neslin, Database Marketing, Springer。それにしても何という厚さなんだろう! これを3人で書いたのだとしたら,スゴいことだ。内容はデータベース・マーケティングあるいは CRM について,基礎概念から各種分析手法,マーケティング・サイエンスのモデルまで何でもありで,いわば事典のような本だ。

Database Marketing: Analyzing and Managing Customers (International Series in Quantitative Marketing)

Springer-Verlag

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Dowling and Chin-Fang, Modern Developments in Behavioral Economics, World Scientific は,扱うトピックの筆頭に Does utility bring hapiness? をあげている。著者は開発経済学が専門らしく,だから hapiness に注目しているというのだろうか。行動経済学の本もまた次々と出版されている。どれを買うべきかの指針がほしいところ。

そして,昨日話題にした蒲島郁夫氏の著書『政権交代と有権者の態度変容』(木鐸社)もまた届いた。「感情温度」という測定尺度をそもそも誰が提案したのたか知りたくて注文したが,パラパラ見た限りではその情報が見つからない(質問の仕方などの情報はあるが)。人物索引があって,事項索引がないのも辛い。感情温度というのは「作者不詳」の手法なのだろうか?

ついでに数日前に買った,荻上チキ『ウェブ炎上』(ちくま新書)を加えておこう。「サイバーカスケード」ということばが気になって購入。これまた,意見形成と関係がありそうだ。

夜になり,クチコミ・シミュレーションのバージョンアップに向け,コードの改訂を始める。そして,ようやく MacBookAir の充電を開始する(これをしないとセットアップさえできない)。


雑誌は欲望の代償

2008-05-12 00:23:11 | Weblog

初めて「食楽」という雑誌を買った。本屋でページを開いた瞬間,釘付けになった。世のなかで最も美味い食べ物は焼鳥と焼きとんではないだろうか・・・。ここで紹介されている店のうち,行ったことがあるのは3店(埼玉屋,匠軍鶏郭,ヴァンピックル)。ミシュランではあり得ないことだ。

食楽 2008年 06月号 [雑誌]

徳間書店

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ああ,ワインと焼鳥(とん)に身を預けたい・・・。
映画も見たい。特に日本映画。

AERA MOVIE ニッポンの映画監督 (AERA Mook AERA MOVIE)

朝日新聞社

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左と右とダウンズ理論

2008-05-11 23:50:51 | Weblog

久しぶりに研究室に行くと,キャビネの引き出しが出たままになっている。数日前の地震のせいだ。だが,心配された機器類の落下はなかったし,あちこちに積み上げられた本も頑張って崩れずにいた。あとは粛々と仕事をするだけなのだが・・・。

今朝のサンプロに,中曽根康弘,土井たか子,不破哲三の三氏が揃って出演していた。90歳が目前に迫る中曽根氏に加え,土井,不破両氏も70歳代後半だ。みんな堂々の「後期高齢者」であるが元気そのものである。それぞれの主張はよくも悪くも「相変わらず」であり,お互い「相容れない」部分が多い。

しかし,一瞬だが奇妙な意見の一致があった。司会の田原総一郎氏が,最近,資本主義は暴走していると述べたところ,社会主義者である不破,土井両氏は当然としても,首相として国鉄等の民営化を進め,レーガン,サッチャーと並ぶ「新自由主義」者であるはずの中曽根氏まで「市場原理主義」を批判した。その後の小泉政権の「改革」などは行き過ぎということなのだろうか。

保守的な論壇を代表するはずの『文藝春秋』は,これまでも積極的に格差や貧困の問題を取り上げてきた。最新の6月号では「世界同時貧困 中流が墜ちていく」という特集が組まれ,日米中のそれぞれの「貧困」事情が報告されている。序文で佐藤優氏は,「新自由主義」がその原因であると批判している。

ここ10年ほど,「格差」や「不平等」に関する研究がさかんになり,ジャーナリズムもさかんにそれを取り上げてきた。しかし最近では,「貧困」という,相対的というより絶対的な問題に焦点が移っているように思える。若者の間で,小林多喜二の『蟹工船』が読まれているという話もある。それはいずれ「左翼」やマルクス主義の復活につながるのだろうか・・・。

『中央公論』6月号で,熊本県知事になったばかりの蒲島郁夫氏が,政治学者らしく自らの勝因をダウンズのモデルで分析している。この選挙の候補者はすべて保守系なので,ダウンズの理論によれば,最も左よりにポジショニングすることが得票を増加させる。そこで蒲島氏は,自民党の支援は受けたが,正式な推薦は固辞したという。

マーケティング研究者は人生の意思決定に理論を活用しているか?

サンプロで田原氏が紹介していた読売新聞社の世論調査によれば,憲法改正の支持率は90年後半をピークに,最近では下がる傾向にある。どうも日本社会の意見分布は,「左」へ揺り戻しているようである。これはふつうに考えると野党に有利に働くはずだが,熊本知事選のように,自民党がその流れにうまく「乗る」こともあり得る。

世論の流れを読み,ポジショニング(立ち位置)を調整する。選挙という winner-take-all なゲームでは,こうした機会主義が避けられない。そういえば,中曽根氏の仇名の一つに「風見鶏」というものがあった・・・。


アップルとポルシェ

2008-05-10 23:36:51 | Weblog

東京をうろうろする間に,小林浩,林信行『アップルとグーグル』を読了。今後ネットの世界を引っ張るのはアップルとグーグル,経営スタイルが最も注目されるのはアップルとグーグル,世の中になくてはならない企業はアップルとグーグル,と思う気持ちにおいて,著者に共感する点が多い。

アップルとグーグル 日本に迫るネット革命の覇者
小川 浩,林 信行
インプレスR&D

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アップルとグーグルの間には様々な相違点がある。著者はそれを,グーグルは道を作るのに対して,アップルはその上を走るクルマを作るという比喩に集約させる。アップルは,限られた顧客を熱狂させるクルマを作るという点で,ポルシェに近いという。iTunes や iPod はもっと大衆路線のようにもみえるが,ポルシェ自身 VW と経営統合したわけだから,このアナロジーは依然として有効かもしれない。一貫した美と快楽を追求する点で,BMW などドイツ車と近い存在であることは確かだ。

いずれにしろ,アップルのような強い熱狂を生み出すブランドを,日本企業から見出すことは難しい。著者は多くの日本企業,あるいはマイクロソフトの発想は「帰納法」的だが,アップルとグーグルは「演繹法」的だという。つまり,あるビジョン,夢に基づいて製品やサービスをデザインし,やみくもに顧客の要求を取り入れることはない。だから,銀メッキの iPod の背面は美しいが汚れやすいという意見に対して,拭けばいいじゃないか,という答えを返す。

スティーブ・ジョブズは取材を受けたとき,記者が iPod をケースに入れているのを見て,そんなものは外すようにといったエピソードが紹介されている。あなたも私も歳をとれば,顔に皺ができる,iPod も同じだといったという(実はぼくも iPod を入れるケースを持っている・・・)。

アップルは顧客が当たり前だと思っている機能を平気でカットする。FDもCDも,いずれいらなくなると思えば,本体からドライブを外してしまう。だが,顧客が本当に喜ぶ機能は付け加える。iPod にはあるときから,イヤフォン端子を外すと局の再生が停止する機能が付いた。これは,実際のユーザの行動をつぶさに観察することから生まれたのではないかと,著者は推察する。ただ,アップルはこの機能を付けたことを全く宣伝していないという。

著者がこの本で一番いいたかったことは,アップルとグーグルが連携(グーグルップル)すれば,すばらしい成果が生み出されるということのようだ。同じくシリコンバレーの企業であり,グーグルのCEOがアップルの社外取締役であり,それぞれが推進するブラウザに共通基盤があるなど,この期待を支持する証拠が列挙される。一方,次世代ケータイの覇権をめぐって,両社が競合する可能性も指摘されている。あるいは,いま予想もしない企業が勃興してくるかも・・・。

検索エンジンの世界でグーグルの支配が強まることへの警戒,アップルがネットのコンテンツ市場を独占することへの脅威論がある。その両社が組めば,それこそビックブラザーになりかねないが,マイクロソフトほどは非難されそうにない。どちらの企業も,本来的に「悪いこと」はしないという性善説が根強いように思う。経済学者から見ればナンセンスだろうけど,ぼく自身にもそういう気持ちがある。この不思議な力こそ,彼らが「革命」を担っている証拠かもしれない。


方法論をどう学ぶか

2008-05-09 23:11:39 | Weblog
2年生向けゼミでは,今日から田村正紀『リサーチ・デザイン―経営知識創造の基本技術』の輪読を開始。経営・マーケティング領域のリサーチ手法について,定量調査と定性調査の双方がバランスよく扱われている。分量も読み易さも適切な教科書だと思って採用したが,大学2年レベルでは難しい,という意見もあった。実際にどうかは,使ってみないとわからない。

この本では,リサーチ(research)ということばを,学術領域で多い「研究」という語に訳さず,実務領域で多い「調査」とも訳さず,あえてそのまま使っている。そこに,単なる学術研究を超えた領域をカバーしたいという著者の心意気が表れている。research とは,re + search であり,「再び調べて新しい知識を創造する活動」だという。なるほど,と感心させられる着眼点だ。

リサーチ・デザイン―経営知識創造の基本技術
田村 正紀
白桃書房

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今日報告してもらった第1章では,この本全体のテーマである,リサーチ・デザインというものが概観される。理論と仮説,構成概念(construct)と概念モデル,データ収集と推論技法,といったリサーチの方法論にまつわる抽象的なテーマが次々と登場する。まったくの初学者たる学生にとって,いきなりこうした話題を聞くことに,若干の戸惑いがあったようだ。

一方,こうした方法論に関する議論を聞く前に,実際の典型的な研究に触れてみるという教育法もあるだろう。どちらがいいかというと,ぼく自身は,両方,としか答えようがない。実際の研究事例から学ぶにしろ,何らかの参照枠があらかじめあったほうがよい。結局,方法論に関して議論することと,実際の研究に触れて体得することは,並行して行うしかないと思う。

そこで,方法論の教科書では,話題ごとに模範となる過去の研究が紹介されていると便利である。この本でも,著者の過去の研究を中心に,参考文献が脚注で紹介されている。ただ,いずれも専門書であり,学部レベルでいちいち読んでいくことは難しい。それぞれの要約なり,「現代のエスプリ」風の抜粋があるとありがたい(人に頼らず,自分で作ればよいか…)。

では,マーケティング・消費者行動領域で,リサーチの方法論を学ぶ上での模範的既存研究に何があるか? それに対してぱっと答えが思いつかないようでは,その領域のリサーチ方法論について語る資格はない。これまでバランスよく勉強してこなかったツケを改めて実感する(だが,どうせ自分でやるなら,それなりのクセがあるものにしたいとは思う)。

もう一つの5月攻勢

2008-05-07 23:23:55 | Weblog

授業の準備が(短期的に)一段落。今日の本務校「マーケティング」は,補講のせいか出席者がいつもより少なく,提出されたコメントシートの数も少なかった。だが,そこに書かれた質問やコメントには,マーケティングに対する真摯な関心が感じられた。大教室で一方的に叫ぶだけでなく,声なき声と対話するような授業(?)ができないものかと考える。ネットを使えばいいのかなあ・・・。

2~3月悩まされた Shuriken 問題は,多くの致命的な問題が「入院」によって治療されたものの,バックアップした内容を復元できないとい新たな病状が未解決のままである。今日も,上述の期間に交わしたメールを探す羽目になり,わずかではあるが不便を被った。Dolphy を気取り,一度見たメールは空気になかに消えていく,とうそぶいてみたい…。

ベンダーのサポートの方は相変わらず誠実に,解決の可能性を示唆するアドバイスを送ってくださる(ただ最近は「結果に責任も持たない」という但し書きが付くようになった・・・)。Mac に移行しようとしている身の上からいうと,もうこれ以上,このメーラーの再生に時間をかけるのは適切でないように思い始めた。 実際,けっこうな時間を無駄に費やしてきたと感じている。

すると今日再び, Acrobat が認証を要求してきた。いい加減にしてくれとサポートのオペレータに文句をいうと,けんもほろろだった前回と違い,技術スタッフに電話を回してくれた。そして,この問題は,ぼくが使っているPCとの相性のせいらしく(技術的な説明は忘れた),パッチを送ってくれるという。それでうまくいくかどうかは,研究室に戻る週末にはっきりする。

広島カープは勝率5割に達することなく,足踏みが続いている。「鯉のぼりの季節まで」というかつての「伝統」さえ維持できなくなったのは,誠に情けない。もういい,ぼくはもっと早く Mac への移行をすすめ,かつ6月の学会発表(5月末の論文投稿)に向けた作業を始めればいいのだ。スポーツ・マーケティングを研究対象にしようなどと,露ほども思ってはならない!

今日入手した本

Harold L. Vogel, Entertainment Industry Economics: A Guide for Financial Analysis (7th edition), Cambridge Univ. Pr.


行動経済学に倣うべきこと

2008-05-07 12:03:01 | Weblog

5/5の日経「経済教室」で,阪大の大竹文雄氏が 「なぜ残る男女間格差」という一文を寄せている。そこでは,男女間の賃金格差を説明する要因として,昇進に対する選好に男女差があるという最近の研究が紹介されている。日米で行われた実験から,男性ほど競争的な報酬制度を好む傾向があることが示されたという。

同じく阪大の池田新介氏が,4/8の「経済教室」に書いた「肥満と負債,強い相関」も興味深い。全国約3,000人を対象とした調査で,肥満度を表すBMIと債務の有無(住宅ローンは除く)の間に強い相関が見出された。池田氏は,肥満と負債に共通する要因として,将来価値を低く見る時間選好をあげる。つまり,粗っぽくいえば,先憂後楽という考えが薄い人ほど肥満し,かつ借金する,ということだ。

こうした「行動経済学」研究は,さまざまな社会現象を人間の選好に帰着させるという点で,伝統的な経済学のパラダイムに沿っている。しかし,選好を抽象的な形式にとどめずに,より具体的に特定している点で,脳科学,心理学,社会学,生物学といった,人間に関わる様々な科学に対して開かれている。つまり,学際的研究の触媒となり得るところが新しい。

競争への好みに性差があるとして,では,なぜそうなるのか,という問が次に来る。アフリカでの実験によると,母系制社会では父系制社会に比べて女性のほうが競争への選好が強くなる。つまり,こうした性差は生物学的要因よりも,社会学的要因によってうまく説明される。となると,なぜ社会は母系制あるいは父系制に分かれるのかが新たな問題になる。こうして探求のリンクが広がっていく。

マーケティング・サイエンスもまた,より具体的な選好のあり方を把握しようとする。個人差も重視する。しかし,なぜそのような選好が形成されたかを問うことは稀である。確かに,日々のマーケティングの意思決定で,顧客の選好の成り立ちまで知る必要はない。しかし,それでは「面白くない」というのがぼくの「選好」だ。なので行動経済学からは,「開かれた姿勢」を学びたいと思う。


GREEの復活から学ぶこと

2008-05-06 20:55:59 | Weblog

読まれないまま溜まっていくのは,本だけではない。部屋の隅に積み上げられていた新聞を読んでいると,少し時間は経っているものの,いくつか面白い記事を発見した。

SNS「グリー」人気が急上昇(日経MJ,2/25,品田英雄のヒットの現象学)

日本へのSNSの導入で当初先行しながら,その後Mixiに水を開けられたGREE。しかし,2006年に始めたケータイ向けサービスが成功し,いまや総加入者が400万人に迫っているという(知らなかった!)。このコラムによれば,その成功要因は単にSNSをケータイに拡張したことではなく,ゲームやキャラクターを開発するなど,20~30代の女性にアピールする世界を作り上げたことにある。 

「市場一番乗り」のまぼろし(日経朝刊,3/10,西岡幸一「核心」)

このコラムでは最初に,東芝のHD-DVDプレイヤー,パイオニアのプラズマテレビという,市場参入で先行しながら成功できなかった事例について論じる。SNS市場で起きたGREEの低迷/Mixiの成功もまた,そうした例の一つといえるだろう。最近,ロンドンビジネススクールの経営学者による"Fast Second" という本が出版され,二番手の優位性が強調されているという。

この本の副題 How Smart Companies Bypass Radical Innovation To Enter and Dominate New Markets だけを見ると,自らはイノベーションのリスクを引き受けないで,二番手として賢く立ち回ろうとする戦略を奨めているような印象を受ける。もしそうだとしたら,みんながそういう戦略を取るとどうなるのだろう・・・。

なだれ現象が行動を左右(日経朝刊,3/4,河野勝,荒井紀一郎「経済教室」)

著者たちが,ブルーレイとHD-DVD の選択を題材にして行った被験者実験が紹介されている。その結果,消費者は他者の採用状況を知らされると,DVDに対する本来の選好が何であれ,大勢に従う選択をしがちであることが示されたという。つまり,消費者の選択に対して「勝ち馬に乗る」効果が非常に大きい,ということだ。

勝ち馬効果,あるいは,なだれ現象を前提にすれば,一番手戦略が有利に思える。なぜなら,最初にわずかでも利用者を増やせば,それが累積して大きな差が開くはずだから。だが,SNS市場で当初先行したはずのGREEに勝ち馬効果が起きず,その後ある時点でそれがMixiに起きたのはなぜだろう。何かもう一つ重要な変数があるように思われる。

勝ち馬効果は,参入のタイミングが全く同じ場合でも,最終的に製品間に決定的な売上の差が開くことを説明する。そして,どちらが勝つかは事前に全く予測できない(Salganik, Dodds and Watts 2006)。さらにもう一つ,予測不能な要因として,勝ち馬効果がいつ働き始めるかを加えるべきだと思う。なぜそうした差異が起きるのかよくわからないが,それがクリティカルであるという予感がする。

・・・とまあ,いくつか記事を無理矢理関連づけると,それなりにいろんな気づきがある。Mixiの成功を説明しそうな「二番手優位」説だが,本当は「なだれ」が起きるタイミングをうまく(あるいは偶然?)捉えたことが重要かもしれない。そしてGREEがケータイ市場で甦ったように,なだれはすべてを押し流すわけではない,といえる。

もっと突っ込めば何か見えてきそうだが,それは今後の課題ということで。


統計学の講義に使える!

2008-05-04 19:05:51 | Weblog
自宅に以下の本が届いていた。前半ではアスクルのビジネスモデルが紹介され,後半では統計分析やデータマイニングの手法が,アスクルの実データを使いながら解説されている。平均の差の検定や相関係数あたりから説き起こしているのがうれしい。なぜなら,商学・経営学の学生向け統計学の講義に,事例として使えるから。いやー何といいタイミングだろう!(お送りいただいた著者に感謝)

戦略的データマイニング アスクルの事例で学ぶ
池尾 恭一,井上 哲浩
日経BP社

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データマイニングで使われる機械学習系の手法は,いかに大量のデータを迅速に処理するかを追求している。統計学がもつ理論的一貫性,一種の美しさのようなものは必ずしも実現されないが,それより「役に立つ」ことが重要なのだ。マーケティング・サイエンスの「最先端」は,MCMC で確率モデルを推定するのが主流だが,計算負荷が大きすぎて実用性が低いように思われる(この隘路を突破する画期的な手法が開発されれば,話は変わってくるが…)。

機械学習のパワーを認めつつ,ぼくがそこに全面的に移行できなかったのは,人間行動に関する理論の検証には使えない,という思いがあったからだ。経済学や心理学が長い歴史を通じて発展させてきたモデルを,データに照らして実証するという発想は,機械学習にはほとんどない。むしろ,下手に対象に関するモデルを仮定していない点が,実務的な長所であったといえる。だが,機械学習を理論モデルの実証に使うという可能性を,もっと追求してもよいかもしれないと,最近つらつら思う。

広告業界に狼が来る?

2008-05-02 15:46:21 | Weblog

メディアの多様化によってTV広告市場が凋落するという議論は,80年代の「ニューメディア」(ケーブルTV,衛星放送,キャプテン,・・・)ブームを経て,インターネットが拡大する90年代にもさかんに行われた。しかし,その間,TV広告市場のスキームはほとんど変化しなかったように思われる。狼が来る,という予言はいつも裏切られてきたが,今度はどうだろう・・・

Google、テレビ広告販売サービスを正式スタート

AdWords形式のTV広告配信,Googleが米国で広告主に全面公開

Place ads on television with Google TV Ads

グーグルの自動化されたシステムは,TV広告の出稿だけでなく,制作者探しまでサポートするという。広告会社という「内部市場」で行われてきたコーディネーションが「すべて」ネット上の自動システムに移植できるとは考えられないが,それができる部分は一定程度あるだろう。

小口の広告需要は,この種のシステムにかなりの程度吸収されていくかもしれない。一方,大口需要に対しては,バンドリング等々の手段を用い,カスタマイズされたサービスが提供されてきたし,今後それがより高度化・効率化するだろう。それができるのは大手代理店だけ,と今後もいえるかどうかがポイントだ。

ちなみに,昨年秋,以下のようなニュースがあったようだが,見逃していた。

Google、Nielsenと提携――テレビ広告分析にデータを活用

グーグルの科学者,エンジニアたちがこうしたデータをいかに扱っていくのか,大変興味深い。迎え撃つ広告会社にとっても,研究開発機能,特にデータ解析やモデリングの役割が今後いっそう重要になるだろう。金融工学のようなイノベーションが,広告業界を席巻する日は近いかもしれない(あるいは,すでに起きている・・・?)。


大学半減,広告末路

2008-05-01 23:47:12 | Weblog

ガソリン暫定税率復活で,昨夜はGSに長蛇の列ができたというニュース。しかし,ぼくの行動範囲では,そんな様子は見られなかった(いかに特殊な場所に住んでいるかという証左なのか・・・)。今日は東京への日帰り。帰りの電車で,東京で買った雑誌をいくつか読む。

ZAITEN6月号 ・・・「大学半減」という刺激的なタイトル。同誌が掲げる「危ない」私大のリストを見ていると,いくつか,ちょっとした「縁」がある在阪の大学が・・・「ホンマかいな?」といいたい気分。次いで「国立 半分が消滅する」という記事。なぜ「半分」なのかは不明。引用されている例の財務省の「シミュレーション」では,旧帝大他の10数校以外は交付金が減らされる可能性がある(あくまでシナリオ上)。 そうなったら,半減どころか・・・。

ZAITEN (財界展望) 2008年 06月号 [雑誌]

財界展望社

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その横に 「電通・博報堂 「広告マン」饗宴の末路」という,これまた刺激的なタイトルが。記事を読んでみると,マス広告の時代は終わった,グーグルはすばらしい,といったお定まりのストーリーで新味はない。「狼が来る!」論は,それを叫び続ける者が最後に狼に食われることもなく,過去何度も繰り返されてきた。もちろん,それが永遠に続くことはないが・・・。

WiLL6月号 ・・・本村洋さんの独占手記50枚。これは,簡単に感想をいえる話題ではない。家族を非道に殺された者が抱く悲しみと怒り,それに対する応報という「正義」を求める気持ち,それは人間の心に組み込まれた感情として確実に存在する。昔,刑法の授業で初めて「教育刑」という思想を聞いたときに感じた違和感を,いまでも覚えている。

WiLL (マンスリーウィル) 2008年 06月号 [雑誌]

ワック

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光市母子殺人事件の判決を契機に,テレビでもネットでも死刑制度の是非が議論された。死刑廃止論もまた,人を殺すことを忌避する何らかの感情に基づいていると思う。どちらの立場も感情に根ざしているだけに,問題を論理的に解きほぐすことが非常に難しい。いや,そう言いきれるかどうかも含めて,難しい。難しいから考えない,というのではないが,もっとも深く長く考える時間が必要だ。

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー5月号 ・・・2008年のパワーコンセプト特集。2007年版を読んだのがつい先日のよう。毎年何十個も「パワーコンセプト」が出続けるとどうなるのか,何てことを心配しても始まらないか。

巻頭言をクリエイティブ・クラス論の主唱者リチャード・フロリダが書いている。所属は,いまはカーネギーメロン大学ではなくトロント大学だ。トロントはピッツバーグよりクリエイティブな都市なのだろうか・・・彼の理論どおりなら,そのはずだ。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2008年 05月号 [雑誌]

ダイヤモンド社

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