Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

不思議の国の授業

2008-05-22 23:52:38 | Weblog
外書購読の授業のあと,何人かの学生がもう少し負担を減らしてくれという。他のクラスはもっと楽だというが,そうやって「低きに流れて」いくと結局どうなるのか…。内容を軽くすると,学生だけでなく教師も楽になるから "win-win" だ,などというのは,悪い冗談だ。そもそも「楽に学ぶ」なんてことはあるんだろうか…。この授業は必修なので,exit という選択のコストは大きく,voice で何とかしようということなのだろうが,voice には説得力が必要だ。

そのあとの大教室の授業では,最近,不思議な光景をよく目にする。講義が始まるとすぐに,何人かの学生が退出していくのだ。この時期だから,教室を間違えたとは思えない。出欠を取らないことは周知のはずなので,出たくなければ最初からいる必要はない。授業資料を事前にダウンロードできるので,今日はどういう話かをチェックするのに,最初だけ出席する必要はない。よくわからないので本人にインタビューしたいぐらいだが,授業中に追いかけていくわけにもいかない。

考えてみれば,最初から最後までほとんど突っ伏して寝ている学生も不思議な存在だ。出席を取らないから,教室にいても何の得にもならないはず。他に行くところがないのでしょうがなくいるのか,教室に来たときはまだ意欲があったが,いざ講義を聴き始めると眠くなったということなのか,何か重大な発表があるかもしれないので,とりあえず出席しておこう,ということなのか…。いずれにしろ,人間の非一貫性,いい加減さということである程度は説明はつくかもしれない。

書店をぶらぶらしていると『ひとりで学べる線型代数』という本に出会った。著者は早稲田大学の授業で,黒板を使った講義をしないで,あらかじめ配っておいた教材(この本の原型)に対する質問を学生から受ける,というスタイルをとっているという。これだと学生が積極的に参画しないと授業は成り立たない。逆に教師は,あらゆる質問に備えておく必要がある。線型代数の復習をする気がないので買わなかったが,著者の「講義をしない授業」の実践を詳しく紹介した本ならば読んでみたいと思う。