Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

方法論をどう学ぶか

2008-05-09 23:11:39 | Weblog
2年生向けゼミでは,今日から田村正紀『リサーチ・デザイン―経営知識創造の基本技術』の輪読を開始。経営・マーケティング領域のリサーチ手法について,定量調査と定性調査の双方がバランスよく扱われている。分量も読み易さも適切な教科書だと思って採用したが,大学2年レベルでは難しい,という意見もあった。実際にどうかは,使ってみないとわからない。

この本では,リサーチ(research)ということばを,学術領域で多い「研究」という語に訳さず,実務領域で多い「調査」とも訳さず,あえてそのまま使っている。そこに,単なる学術研究を超えた領域をカバーしたいという著者の心意気が表れている。research とは,re + search であり,「再び調べて新しい知識を創造する活動」だという。なるほど,と感心させられる着眼点だ。

リサーチ・デザイン―経営知識創造の基本技術
田村 正紀
白桃書房

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今日報告してもらった第1章では,この本全体のテーマである,リサーチ・デザインというものが概観される。理論と仮説,構成概念(construct)と概念モデル,データ収集と推論技法,といったリサーチの方法論にまつわる抽象的なテーマが次々と登場する。まったくの初学者たる学生にとって,いきなりこうした話題を聞くことに,若干の戸惑いがあったようだ。

一方,こうした方法論に関する議論を聞く前に,実際の典型的な研究に触れてみるという教育法もあるだろう。どちらがいいかというと,ぼく自身は,両方,としか答えようがない。実際の研究事例から学ぶにしろ,何らかの参照枠があらかじめあったほうがよい。結局,方法論に関して議論することと,実際の研究に触れて体得することは,並行して行うしかないと思う。

そこで,方法論の教科書では,話題ごとに模範となる過去の研究が紹介されていると便利である。この本でも,著者の過去の研究を中心に,参考文献が脚注で紹介されている。ただ,いずれも専門書であり,学部レベルでいちいち読んでいくことは難しい。それぞれの要約なり,「現代のエスプリ」風の抜粋があるとありがたい(人に頼らず,自分で作ればよいか…)。

では,マーケティング・消費者行動領域で,リサーチの方法論を学ぶ上での模範的既存研究に何があるか? それに対してぱっと答えが思いつかないようでは,その領域のリサーチ方法論について語る資格はない。これまでバランスよく勉強してこなかったツケを改めて実感する(だが,どうせ自分でやるなら,それなりのクセがあるものにしたいとは思う)。