Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

もう一つの5月攻勢

2008-05-07 23:23:55 | Weblog

授業の準備が(短期的に)一段落。今日の本務校「マーケティング」は,補講のせいか出席者がいつもより少なく,提出されたコメントシートの数も少なかった。だが,そこに書かれた質問やコメントには,マーケティングに対する真摯な関心が感じられた。大教室で一方的に叫ぶだけでなく,声なき声と対話するような授業(?)ができないものかと考える。ネットを使えばいいのかなあ・・・。

2~3月悩まされた Shuriken 問題は,多くの致命的な問題が「入院」によって治療されたものの,バックアップした内容を復元できないとい新たな病状が未解決のままである。今日も,上述の期間に交わしたメールを探す羽目になり,わずかではあるが不便を被った。Dolphy を気取り,一度見たメールは空気になかに消えていく,とうそぶいてみたい…。

ベンダーのサポートの方は相変わらず誠実に,解決の可能性を示唆するアドバイスを送ってくださる(ただ最近は「結果に責任も持たない」という但し書きが付くようになった・・・)。Mac に移行しようとしている身の上からいうと,もうこれ以上,このメーラーの再生に時間をかけるのは適切でないように思い始めた。 実際,けっこうな時間を無駄に費やしてきたと感じている。

すると今日再び, Acrobat が認証を要求してきた。いい加減にしてくれとサポートのオペレータに文句をいうと,けんもほろろだった前回と違い,技術スタッフに電話を回してくれた。そして,この問題は,ぼくが使っているPCとの相性のせいらしく(技術的な説明は忘れた),パッチを送ってくれるという。それでうまくいくかどうかは,研究室に戻る週末にはっきりする。

広島カープは勝率5割に達することなく,足踏みが続いている。「鯉のぼりの季節まで」というかつての「伝統」さえ維持できなくなったのは,誠に情けない。もういい,ぼくはもっと早く Mac への移行をすすめ,かつ6月の学会発表(5月末の論文投稿)に向けた作業を始めればいいのだ。スポーツ・マーケティングを研究対象にしようなどと,露ほども思ってはならない!

今日入手した本

Harold L. Vogel, Entertainment Industry Economics: A Guide for Financial Analysis (7th edition), Cambridge Univ. Pr.


行動経済学に倣うべきこと

2008-05-07 12:03:01 | Weblog

5/5の日経「経済教室」で,阪大の大竹文雄氏が 「なぜ残る男女間格差」という一文を寄せている。そこでは,男女間の賃金格差を説明する要因として,昇進に対する選好に男女差があるという最近の研究が紹介されている。日米で行われた実験から,男性ほど競争的な報酬制度を好む傾向があることが示されたという。

同じく阪大の池田新介氏が,4/8の「経済教室」に書いた「肥満と負債,強い相関」も興味深い。全国約3,000人を対象とした調査で,肥満度を表すBMIと債務の有無(住宅ローンは除く)の間に強い相関が見出された。池田氏は,肥満と負債に共通する要因として,将来価値を低く見る時間選好をあげる。つまり,粗っぽくいえば,先憂後楽という考えが薄い人ほど肥満し,かつ借金する,ということだ。

こうした「行動経済学」研究は,さまざまな社会現象を人間の選好に帰着させるという点で,伝統的な経済学のパラダイムに沿っている。しかし,選好を抽象的な形式にとどめずに,より具体的に特定している点で,脳科学,心理学,社会学,生物学といった,人間に関わる様々な科学に対して開かれている。つまり,学際的研究の触媒となり得るところが新しい。

競争への好みに性差があるとして,では,なぜそうなるのか,という問が次に来る。アフリカでの実験によると,母系制社会では父系制社会に比べて女性のほうが競争への選好が強くなる。つまり,こうした性差は生物学的要因よりも,社会学的要因によってうまく説明される。となると,なぜ社会は母系制あるいは父系制に分かれるのかが新たな問題になる。こうして探求のリンクが広がっていく。

マーケティング・サイエンスもまた,より具体的な選好のあり方を把握しようとする。個人差も重視する。しかし,なぜそのような選好が形成されたかを問うことは稀である。確かに,日々のマーケティングの意思決定で,顧客の選好の成り立ちまで知る必要はない。しかし,それでは「面白くない」というのがぼくの「選好」だ。なので行動経済学からは,「開かれた姿勢」を学びたいと思う。