Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

集中講義@筑波大学 2日目

2010-01-06 23:48:22 | Weblog
年末に続く筑波大での集中講義2日目。前回より若干学生は減ったみたいだが,それでも4~50人は出席していただろうか。まだ本格的に授業が始まっていないこの時期に,ありがたい。それで思い出したのが,以前筑波大学の大学院で離散的選択モデルの講義をしたときのことだ。最初は2~30人はいたであろう受講者が日を追うごとに減っていき,最後は数人になった。いまの時代,院生以上に知的好奇心の強い学部学生が少なからずいるということか・・・。

それはともかく,今回の講義は Salganik, Dodds & Watts による音楽ダウンロードの実験の紹介から始める。単純にして明快に社会的相互作用の効果を示した見事な実験だ。ついで,クチコミとマーケティングに関する一般的な話をしながら,Godes & Mayzlin によるいくつかの実証研究を一瞥。そして Hogan, Lemon & Libai のクチコミ乗数,Watts, Peretti & Frumin によるクチコミ伝播の事例研究を紹介したところで,予定より相当遅れ気味に進行していることに気づく。

そこで第二部に入り,複雑ネットワークの基礎概念を説明したあと,Leskovec, Adamic & Huberman の顧客間推奨メールの実証分析を紹介。これまた,一般的な予想に反する興味深い結果が得られている。そして「悪名高き」Watts & Dodds のシミュレーションへ・・・。それに対する反論を試みた自分自身の研究についても触れながら,まだまだツッコミが不足しているなあと,いまさらながら痛感。第3部は離散的選択モデルで社会的相互作用をいかに扱うかを論じる。

「懐かしの」TV視聴行動のエージェントベース・モデルを皮切りに,空間的自己相関モデルや準拠集団モデルといった定番に触れつつも,最後は購買履歴データから潜在的なインフルエンサー/インフルエンシーをあぶり出す「未完の」手法の研究についてしゃべり,ぎりぎり予定終了時刻に達する。最後は駆け足で,わかりにくかった受講者もいたと思うが,この講義の目的は研究動向のレビューなので,詳しくは参考文献に掲げた原論文にあたっていただきたい。

講義が終わったところで,評価はレポートなのかテストなのかと質問を受ける。いつまでも先送りできないので,その場で決断。この講義を熱心に聴いていた学生(あるいはそうでなくても,深い考察ができる学生)なら提出できるレポートにする。なお,ここまでの反省点は,時間の制約もありほとんどぼくが一方的にしゃべり倒したことだ。最終回は「普及と社会的相互作用」について話す予定だが,もう少し双方向的にしたいなと思っている。できるかな・・・。

いずれにしろ2週間後の水曜日にその日が来る。そう遠い先のことではない。

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