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Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

大学は実務家に何を教えることができるのか

2007-10-11 23:57:12 | Weblog
今日,企業で研究に従事されている方からもらったメールに,サービスを大学で研究できるのだろうか,という疑問が書かれていた。某大学で非常勤をしたり,別の大学の研究グループとコラボレーションしている方であり,大学の実態にも通じている。一方,企業出身とはいえ,5年近く大学で暮らしているぼくには,見えなくなったものもあるかもしれないと,少し反省する。

さるプロジェクトの申請で,ORやデータ解析を駆使してイノベーションを起こす人材を育成する,と提案したところ,ある審査員から,そういうアプローチでイノベーションが起こせるはずがない,という批判を受けたそうだ。金融工学では数学を駆使してイノベーションを起こしている。マーケティングのような人間くさい領域では,そんなことは無理なのか・・・そんなことはない,グーグルでは,Ph.D.たちが結集して画期的なサービスを生み出しているではないか。

とはいえ,日本の大学はスタンフォードと同じではない。アカデミズムと実践の乖離が依然として大きいまま,産学協同や社会人向け教育が推進されている。退職した企業経営者や経営幹部を教員に受け入れるだけでは十分でない。米国のように,大学と企業の間をつねに人が行き来している風土が必要である(・・・なんて書くと,お前は企業に戻る気があるのか,戻って役に立つと思うのか,と指弾されそうだ)。

今日の脳科学塾では,参加している実務家の方々からのプレゼンが行われた。脳科学というものを手がかりに,それぞれが考えるブランド戦略や組織マネジメントが次々と語られる。彼らが知りたいのは,ビジネスを遂行する上での運転スキルや交通法規のようなものだろうか? それとも,夢をかなえる魔法の杖だろうか? そうではなく,どうもご自分のなかにある漠然たる思いを,もう少し確たるものとして明確化したい,ということのように感じた。

その際必要となる知識は,多少論理的な厳密さや実証的基盤を欠いたとしても,洞察に富み,発想を刺激してくれるものだと思われる。そうしたことばは,偉大な哲学者や天才的芸術家から発せられることが多い。科学のことばは,むしろ逆の作用をするおそれさえある。だとすると,科学志向の大学教員は,どうすれば実務家の思いに役立つことができるのか。彼らの思いを学界で受け入れられる論文にすることだろうか。それが可能として,それだけでいいのか・・・答えは出ない。

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