Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

相転移を起こそう!

2007-10-10 21:24:09 | Weblog
昨日,久しぶりに東大本郷キャンパスに行く。来年から,博士課程の授業料を実質ゼロにするという。総費用10億円! まさにトップ企業によるダンピングだ・・・そんなことしなくても競争力がありそうなのに・・・トップ企業ほど危機意識,競争心が強いということか・・・競争相手は国内ではない,とのことのようだが。それはともかく事務の方は,いつになく親切であった。

そのあとMMRCで打ち合わせる。ここの院生の皆様も,来年から学費がタダになるんだ・・・。そのあと西に向かい opinion dynamics の勉強会。マックをウィンドウズ・マシンとしてだけ使っている例を見て驚く。ただ,ノート型とはいえかなり重く,ふだんの持ち歩きには向いていない。キーノートで学会報告したい気持ちは大であり,そろそろと思うのだが・・・。

夜は,複雑ネットワーク研究の第一人者である増田さんを研究会にお招きして,ネットワーク上の情報伝播そして進化ゲームの研究についてお聞きする。最初に増田さんは,複雑ネットワークが十分複雑なので,そのうえでのエージェントの行動はなるべく単純化して,何が起きているかを明確に理解すべきだと語る。どきっとする。

情報伝播は,感染症モデルで分析できる。そこにネットワーク構造を入れた研究が進んでいる。一般にスケールフリーネットワークでは感染が早いが,例外もあるという。また,ウィルスとアンチウィルスを扱うモデルでは,ベキ指数がある臨界点を超えた瞬間,パラメターの効果が大きく変わる。このような臨界点は,多くのモデルで3とか2.5とか,きりのいい数字であるという。美しい!

複雑ネットワーク上の進化ゲームでは,利得に参加コストを入れることが提案される。利得がすべて正値の場合,ハブほど大きな利得を得ることが自明になるからだ。参加コストの導入は,ランダムグラフでは結果に影響を与えないが,スケールフリーになったとたん,大きな影響を与える。ある段階で,ハブほど損をする状況が生まれるのだ。

複雑系の研究の醍醐味は,一つには,より単純なモデルから,何らかの相転移を導くことだろう。今朝届いたメールには,増田さんからぼくらの論文へのコメントが添えられていた。彼ほどの才気がなくても,頑張って,ささやかながら面白い結果を出そうという意欲がわく。午後の会議で秋山さんと,昨夜のセミナーを振り返る。そのあと,長い会議を経て,修論,卒論の打ち合わせ。

今日届いた本:

佐藤可士和『佐藤可士和の超整理術』日本経済新聞出版社 ・・・これを読んで,ぼくもクリイティブになろう。

Raymond Pettit: Learning from Winners: How the ARF David Ogliby Award Winners Use Marketing Research to Create Advertising Success, Advertising Research Foundation ・・・副題の如し。いつか教材に使えるかも。

Gad Saad: The Evolutionary Bases of Consumption, Lawrence Erlbaum ・・・消費への進化心理学的アプローチ。文中に数表が少ない。つまり,進化心理学では実験やデータ解析はあまり行われず,基本は「お話し」だということ。それが悪いというのではない。

Peter Diamond and Hannu Vartiainen: Behavioral Economics and Applications, Princeton University Press ・・・各章を眺めるが,すぐに読みたいところがない。なぜ注文したか忘れたが,おそらく執筆者やコメンテータの名前に惹かれたのだろう・・・。

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