昨夜のJIMS部会は以下のメニューであった:
消費者インサイトをいかに獲得するか―あるクリエイティブ・エージェンシーの取材に基づく考察
水野誠(明治大学),生稲史彦(筑波大学)
ペルソナ法の実践適用―製品サービス開発における現場での改良と方法論的検討について
渡辺理(富士通研究所)
前者は,ナイキの広告制作などで世界的に有名なクリエイティブ・エージェンシー W+K 社の東京オフィスを取材し,5人のクリエイター/プランナーから,消費者インサイトをどう獲得しているかを聴いたもの。6月の商業学会で発表した内容に,若干の補論を付け加えた。
奇しくもこの日,この研究を「研究ノート」として収録した『赤門マネジメント・レビュー』の最新号がウェブ上で公開された。興味をお持ちの方は,ぜひ論文をダウンロードしていただきたい(GBRC会員,サイト・ライセンス契約校の方は無料,そうでない方は恐縮ながら有料となる・・・)。
事例研究なので,聞き取りの結果をまとめた原文を読んでいただくのが一番面白いはずだ。しかし,あえて一言でまとめるなら,消費者インサイト獲得の方法論は,(1) 観察・取材,(2) 想像とメンタル・シミュレーション,(3) 社外ネットワーキングの3点に集約される(当たり前すぎるかもしれないが)。
なお,今回新たに補論として加えたのが,(1) 少数例の任意抽出 vs. 代表性,(2) 個別事例の深掘り vs. 一般性,(3) (しばしば無意識の)他者理解・同一化 vs. 客観性,という議論である。実務的にはともかく,理論的には未解決の問題だと思われるので,自分なりに考察を行った。
次いで,富士通の渡辺さんによる「ペルソナ法」の話。ウェブデザインや製品開発で注目されている手法だ。以下のような参考書もあるが,それを読めばわかる,というわけではなさそうだ。つまり,実践してみなければわからないという(もちろん何事もそうではあるが・・・)。
そこで渡辺さんの発表も,事例に即したものとなる。それを聴いて,ぼくが大まかに理解したのは以下のようなことだ。まずは対象とする顧客にデプス・インタビューを行い,彼(女)が置かれた状況から生活のなかで感じていることまでを徹底して聴く。1人ひとりをマップに位置づけて相対的に理解する。
そこまではデプス・インタビューと同じだが,ペルソナ法はそれ以降に特徴がある。1回答者=1ペルソナとは限らず,別の個人から得られた情報を複合して,新たな人格を作ったりもする(やりすぎるとフランケンシュタインになると渡辺さん)。そうして,いくつかの「ペルソナ」が想像=創造される。
さらに,製品開発に関わる人々が,それぞれのペルソナを演じみたりして,一体化する(石井淳蔵先生流にいえば「棲み込む」?)。そして,製品とのインタラクションについてメンタル・シミュレーションをする。このあたり,上述のW+K社への取材で学んだインサイト獲得手法とかなり重なっている。
したがって,上述の補論で指摘した3点がまさに重要となる。特にシミュレーションという部分だ。エージェントベース・アプローチが量的な構成論的方法であるとすれば,ペルソナ法は質的な構成論的方法ともいえる。構成されたものをリアルと感じるかどうかが,評価の分かれ目になるだろう。
クリエイターたちのインサイトの獲得とエンジニアたちのペルソナ法,そして少し飛躍するが,エージェントベース・モデリングが目指すものが通底しているという認識は,個人的には非常に「インサイトに富む」。基本的に同じ構造の問題だから,1つ解決すれば別も解決されるのではないだろうか。
消費者インサイトをいかに獲得するか―あるクリエイティブ・エージェンシーの取材に基づく考察
水野誠(明治大学),生稲史彦(筑波大学)
ペルソナ法の実践適用―製品サービス開発における現場での改良と方法論的検討について
渡辺理(富士通研究所)
前者は,ナイキの広告制作などで世界的に有名なクリエイティブ・エージェンシー W+K 社の東京オフィスを取材し,5人のクリエイター/プランナーから,消費者インサイトをどう獲得しているかを聴いたもの。6月の商業学会で発表した内容に,若干の補論を付け加えた。
奇しくもこの日,この研究を「研究ノート」として収録した『赤門マネジメント・レビュー』の最新号がウェブ上で公開された。興味をお持ちの方は,ぜひ論文をダウンロードしていただきたい(GBRC会員,サイト・ライセンス契約校の方は無料,そうでない方は恐縮ながら有料となる・・・)。
事例研究なので,聞き取りの結果をまとめた原文を読んでいただくのが一番面白いはずだ。しかし,あえて一言でまとめるなら,消費者インサイト獲得の方法論は,(1) 観察・取材,(2) 想像とメンタル・シミュレーション,(3) 社外ネットワーキングの3点に集約される(当たり前すぎるかもしれないが)。
なお,今回新たに補論として加えたのが,(1) 少数例の任意抽出 vs. 代表性,(2) 個別事例の深掘り vs. 一般性,(3) (しばしば無意識の)他者理解・同一化 vs. 客観性,という議論である。実務的にはともかく,理論的には未解決の問題だと思われるので,自分なりに考察を行った。
次いで,富士通の渡辺さんによる「ペルソナ法」の話。ウェブデザインや製品開発で注目されている手法だ。以下のような参考書もあるが,それを読めばわかる,というわけではなさそうだ。つまり,実践してみなければわからないという(もちろん何事もそうではあるが・・・)。
About Face 3 インタラクションデザインの極意 | |
Alan Cooper 他 | |
アスキー・メディアワークス |
ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする | |
ジョン・S.プルーイット | |
ダイヤモンド社 |
そこで渡辺さんの発表も,事例に即したものとなる。それを聴いて,ぼくが大まかに理解したのは以下のようなことだ。まずは対象とする顧客にデプス・インタビューを行い,彼(女)が置かれた状況から生活のなかで感じていることまでを徹底して聴く。1人ひとりをマップに位置づけて相対的に理解する。
そこまではデプス・インタビューと同じだが,ペルソナ法はそれ以降に特徴がある。1回答者=1ペルソナとは限らず,別の個人から得られた情報を複合して,新たな人格を作ったりもする(やりすぎるとフランケンシュタインになると渡辺さん)。そうして,いくつかの「ペルソナ」が想像=創造される。
さらに,製品開発に関わる人々が,それぞれのペルソナを演じみたりして,一体化する(石井淳蔵先生流にいえば「棲み込む」?)。そして,製品とのインタラクションについてメンタル・シミュレーションをする。このあたり,上述のW+K社への取材で学んだインサイト獲得手法とかなり重なっている。
したがって,上述の補論で指摘した3点がまさに重要となる。特にシミュレーションという部分だ。エージェントベース・アプローチが量的な構成論的方法であるとすれば,ペルソナ法は質的な構成論的方法ともいえる。構成されたものをリアルと感じるかどうかが,評価の分かれ目になるだろう。
クリエイターたちのインサイトの獲得とエンジニアたちのペルソナ法,そして少し飛躍するが,エージェントベース・モデリングが目指すものが通底しているという認識は,個人的には非常に「インサイトに富む」。基本的に同じ構造の問題だから,1つ解決すれば別も解決されるのではないだろうか。
微妙な(?!)違いに注意を払いつつ、それらを統合してゆければ、と思います!!
昨日の懇親会で、自分は「ペルソナ(シミュレーター)のマネキン業」を妄想していました^^
どんなイメージかさっぱり分かりませんが,エロっぽい感じがします・・・
が、そういう用途(?!)の方が先に出てくるかもしれません^^;