Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

アップル「最大の」謎

2009-09-25 23:22:43 | Weblog
「ビジネスアスキー」11月号は「アップルの謎」という特集を組んでいる。副題は「『業界ひとり勝ち』その理由」で,それを集約した7つのポイントを示している:

1. 破壊: iTunes Store による価格破壊,App Store によるソフトの開発・配信・課金の中抜き一元化(さらには開発の草の根化),Intel Mac による Windows との壁の破壊,が例に挙る。

2. 再構築: iPhone の「軽」装備(カメラの画素数の低さ,日本でしか通用しないワンセグやおサイフケータイへの非対応),製品ラインの絞り込み(再構築),UNIX をベースにした Mac OS X。

3. 新機軸: 初代 iMac のデザイン,iTunes Store のビジネスモデル,Mac Book Air/Pro に採用されたアルミ切削ユニボディが例に挙がる。あえてリスクをとることで,果実を得たとする。

4. 切り捨て: Macworld Expo からの撤退,Mac OS 互換機戦略の放棄,Mac OS 9 から OS X への非連続的進化,販売店の限定,iMac からの FD 追放、インターフェースの USB への統一。

5. プレゼン: スティーブ・ジョブズによる巧みな新製品発表,熱意,じらし,驚き,シンプルさ。アップル復活を印象づけた Think Different キャンペーン。

6. 先見:iBook の無線 LAN 対応,iBook のデザイン変更(大成功した半透明ボディからホワイトボディへの速やかな移行),iPhone からのキーボード追放,OS X における透明性のある GUI など。

7. こだわり:iPod におけるクリックホイールの進化,マウスやトラックパッドのシンプル化,片手で開けられる iBook のラッチレス方式の液晶カバーなど。

・・・こう見てくると、やはりデザインの力がどうしても目立つ。「新機軸」「先見」「こだわり」など,それ自体が合目的化してしまうと,独りよがりの製品になってしまう。その点で「再構築」に関して語られた「iPhone は、ありふれた技術を徹底して再考・再構築していった結果として辿り着いた非凡な製品」であるという指摘が重要である。なぜそういう化学変化が起きるのか,そこがアップル最大の「謎」である。シナジーとか非線形とか呼ぶだけでは,そのメカニズムを理解できない。

月刊 ビジネスアスキー 2009年 11月号 [雑誌]

アスキー・メディアワークス

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なお,この特集には他にも興味深い記事がまだまだある。「加速するアップルのプラットフォームビジネス」という記事では、アップル社の財務データが分析されていて興味深い。執筆者は,会計士でもあり,アルファブロガーでもある磯崎哲也氏である。

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