先週の今日,JIMS「消費者行動のダイナミクス」部会では,以下の2つの研究発表があった:
開発活動とマーケティングの連携―ユーザの組織化によるイノベーションの実現
生稲史彦(筑波大学),藤田英樹(東洋大学)
インフルエンサーマーケティングはいつ効くか:エージェントベース・モデリングによる探求
水野誠(明治大学)
最初の発表は組織論の立場からの研究である。ウェブサービスは,パッケージ型のソフトウェアなどに比べ,システムの完成度を高めることなく市場導入される。そして顧客との対話を通じて改良していくという開発スタイルがとられる。そのためユーザの組織化が重要となる。
本研究の肝は,ユーザがサービスを解釈するプロセスに Weick の理論を適用したことだろう。そこではイナクトメント~淘汰~保持という3段階を通じて「解釈多義性」が縮減するとされる。イナクトメントとは対象を分節化し,何が理解できないかに気づくことだという。
そのプロセスはさらに「創発的」な場合と「意図的」な場合に分類され,それぞれの事例が比較される。その違いは開発初期の解釈多義性の高低にあるという主張に聞こえるが,だとすると同義反復的に思える。実際はもっと緻密に議論されていると思うが自分の理解が追いつかない。
ユーザの組織化を創発的-意図的という一次元に集約しているように見えるが,顧客の発言や参加が製品開発のどのレベルまで及ぶのかなど,本来は多次元のはずである。そのことに著者たちが気づいていないわけがなく,発表をわかりやすくする過程で省略されたのかもしれない。
この研究では主に解釈多義性の動的な変化に注目し,新サービスの成功-失敗を分析しようとする。では,そもそも解釈多義性とは何なのか。個人間での認識のバラツキなのか,一個人ですら明確な認識を得られないということなのか。マーケティング研究者としてはそのあたりが気になる。
ぼく自身が組織論について十分な知識を欠いているせいもあって,この研究に対して「解釈多義性」に直面することになった。本研究で取り上げられている問題はマーケティングでも注目されているホットな話題だけに,お互いのコミュニケーションが円滑に進めば実り多いことになるだろう。
二番目の発表については,一昨日行われた JIMS 研究大会で発表されたので,次の投稿で言及したい。
開発活動とマーケティングの連携―ユーザの組織化によるイノベーションの実現
生稲史彦(筑波大学),藤田英樹(東洋大学)
インフルエンサーマーケティングはいつ効くか:エージェントベース・モデリングによる探求
水野誠(明治大学)
最初の発表は組織論の立場からの研究である。ウェブサービスは,パッケージ型のソフトウェアなどに比べ,システムの完成度を高めることなく市場導入される。そして顧客との対話を通じて改良していくという開発スタイルがとられる。そのためユーザの組織化が重要となる。
本研究の肝は,ユーザがサービスを解釈するプロセスに Weick の理論を適用したことだろう。そこではイナクトメント~淘汰~保持という3段階を通じて「解釈多義性」が縮減するとされる。イナクトメントとは対象を分節化し,何が理解できないかに気づくことだという。
そのプロセスはさらに「創発的」な場合と「意図的」な場合に分類され,それぞれの事例が比較される。その違いは開発初期の解釈多義性の高低にあるという主張に聞こえるが,だとすると同義反復的に思える。実際はもっと緻密に議論されていると思うが自分の理解が追いつかない。
ユーザの組織化を創発的-意図的という一次元に集約しているように見えるが,顧客の発言や参加が製品開発のどのレベルまで及ぶのかなど,本来は多次元のはずである。そのことに著者たちが気づいていないわけがなく,発表をわかりやすくする過程で省略されたのかもしれない。
この研究では主に解釈多義性の動的な変化に注目し,新サービスの成功-失敗を分析しようとする。では,そもそも解釈多義性とは何なのか。個人間での認識のバラツキなのか,一個人ですら明確な認識を得られないということなのか。マーケティング研究者としてはそのあたりが気になる。
ぼく自身が組織論について十分な知識を欠いているせいもあって,この研究に対して「解釈多義性」に直面することになった。本研究で取り上げられている問題はマーケティングでも注目されているホットな話題だけに,お互いのコミュニケーションが円滑に進めば実り多いことになるだろう。
二番目の発表については,一昨日行われた JIMS 研究大会で発表されたので,次の投稿で言及したい。