Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

RコマンダーによるMRの教科書

2013-12-30 11:39:17 | Weblog
今年恵贈いただいた本には、照井伸彦、佐藤忠彦両先生による『現代マーケティング・リサーチ』もある。これは、表題の通りマーケティング・リサーチ(MR)の教科書である。このお二人の名前から、教科書といってもバリバリのベイズ統計の本かと想像してしまったが、そうではない。

現代マーケティング・リサーチ
―市場を読み解くデータ分析
照井伸彦、佐藤忠彦
有斐閣

本書は、Rコマンダーという、GUI に優れたフリーソフトで実行することを前提に、マーケティング・リサーチで使われる基本的な手法の「使い方」を教えている。カバーされている統計手法は回帰分析、因子分析、クラスタ分析、コレスポンデンス分析、ロジスティック回帰など。

これだけの手法を使いこなせれば、マーケティング・リサーチャーとして申し分ないだろう。ところが本書は、コンジョイント分析、バスモデル、RFM分析、離散選択モデル、アソシエーション分析といった、マーケティング分野に固有かそれに近い手法まで紹介する。

一部の手法は、Rそのものを使う必要があるが、基本はRコマンダーでできる範囲にある。ぼくとしては、原理を理解しやすく、使いでもある決定木がここに含まれていれば、さらにうれしかったが・・・。Rコマンダーで対応していないので、除外されたのかもしれない。

自分も恥ずかしながら学部生や MBA の学生に R を教えているので、Rコマンダーを教えるという選択肢について大いに考えさせられた。懸念されるのが、Rコマンダーを使ってしまうと、R自体はなるべく使いたくない、という姿勢になりはしないかということだ。

もっとも、そうでなくてもRを使うことは一般の文系学生(および社会人)には億劫だから、そんなことを最初から心配をするのは意味がないかもしれない。ともかく、もしRコマンダーで教えることになれば、この本は間違いなく、教科書の筆頭候補になるだろう。

とまれ、精力的に研究を進めながら、このような優れた教科書をも世に送り出す著者たちのパワーには感嘆せざるを得ない。

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