Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

二軍力

2009-10-01 22:58:12 | Weblog
今日のゼミで,卒論でテレビの視聴率を研究対象にしたいというS君が発表した。その流れで,プロ野球,とりわけ巨人戦の視聴率の低さを話題にしたところ,熱烈な巨人ファンのI君から,地上波テレビの代わりに BS やインターネットでの視聴が増えているのでは,という指摘があった。なるほど・・・ しかし,そうはいっても地上波のベースはきわめて大きい。そこでの「プロ野球離れ」は,否定できないとぼくは答えた。

その一因として,そもそもテレビ中継の中心にあった巨人が強すぎて,コアな巨人ファン以外はペナントレースに興味を失ったといわれることがある。スポーツの経済学的研究によれば,チームの力が均衡し,緊迫した展開になるほど,観客の効用は高いという。現在巨人と2位とのゲーム差は10ゲーム以上,3位との差は 20ゲームを超える。もしクライマックスシリーズで巨人が優勝を逃すことになったら,この勝差は何なのか,ということになる。

巨人がここまで強いのは,他チームから主力投手や4番バッターを次々と奪ってきたためだとよくいわれる。それは否定できない事実だが,それだけではないと,スポーツライターの相沢光一氏は指摘する。DIAMOND online に掲載されたコラムによれば,一昨年発足した育成選手制度などを活用し,二軍を底上げしたことが大きいという。その典型が,育成選手出身で一軍で活躍している松本哲也外野手や山口鉄也,オビスポなどの投手である。

強すぎる巨人の陰で、セ・リーグの戦力格差が拡大していく悪循環

育成選手制度とは,二軍を含めた支配下登録選手70名という枠を超え,育成目的のため選手と契約を認める制度である。それを最も活用しているのが巨人で,10名を越す育成選手を抱える。2番目がロッテだが,この両チームの二軍は,今年のイースタン・リーグの1位,2位になっている点が注目される。ちなみに,わが広島カープには,いまのところ4名の育成選手しかいない。そして広島の二軍は,今年ウェスタンリーグの最下位であった。

育成選手の存在は二軍の選手にとって刺激となり,二軍が強くなれば選手層が厚くなり,一軍も強くなる。他球団からとったベテラン選手たちは,休養をとりながら活躍できる。育成選手の給料は低いといっても,諸経費を入れると年間1千万ぐらいのコストがかかるとのこと。つまり,人気があって財力のある球団しか十分活用できない。したがって,セの球団間の格差はいっそう広がるだろうと相沢氏は主張する。そして,次のように結ぶ:
巨人が強化の好循環に乗っている裏で、セ・リーグ全体はつまらなくなるという悪循環が始りつつあるのだ。前述したように巨人はアンフェアなことをしているわけではない。現行のルールのもと、どこにも増して強化の努力をしているということだ。それに対して無残な試合しかできない球団は、大改革の必要があるということである。
広島カープのように財力のないチームにとって,どういう「大改革」があり得るのだろうか? MLB のようにドラフトにウェーバー制を導入したり,選手に高給を支払う金満球団から貧乏球団に「贅沢税」によって資金を移転させるのは,おそらく日本では難しいだろう。自助努力でどこまでやれるか,なかなか厳しそうだが,ぜめて二軍は何とかしたいものだ。数千万円出して外人を1人雇うか,同じカネで育成選手を何人も育てるか,どちらがいいか考える必要がある。

追記)もっとも,巨人はそれらを選択する必要はなく,両方やることができる。ということは,選択と集中だけでは,強くなれない・・・?

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