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Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

iPhone のシェアを論じることの意味

2009-04-15 17:02:45 | Weblog
ITMediaの「 iPhoneアプリ開発者は「愛」故に負けるのか? 」と題するコラムで,シリコンバレーのモバイル・アプリの開発者たちが IPhone ばかりに注目し,それよりはるかに大きなシェアを持つ Nokia が仕掛ける OviStore に関心を示さないことが批判されている。また,彼らは Android, BlackBerry, Windows Mobile にもさほど関心を持っていない。 これは,大いなる機会損失ではないか,というわけだ。

このコラムを書く Joe Wilcox 氏いわく,
新しいプラットフォームにとって鶏と卵の問題はつきものだ―デバイスやプラットフォームの売り上げとアプリケーションはどちらが先だろうか? 普通、開発者はユーザーのいないアプリケーションを開発したがらない。同様に、アプリケーションのないプラットフォームは人気が出ない。iPhoneは、アプリケーション開発がプラットフォームとデバイスの普及をはるかに超えているという点で、この一般原則から少々外れている。
ハードとソフトの共進化的普及プロセス。これは,普及研究にとっても重要なテーマである。鶏と卵の問題だといいつも,Wilcox 氏のいいたいことは,iPhone の場合ハードの普及が遅れすぎており,それはソフトの商売にいずれ限界をもたらすだろう,ということだろう。一方,その逆の見方をするのが,iPhone 向けアプリの開発者でもある中島聡氏である。中島氏はブログのなかで以下のように述べている:
iPhoneのマーケットシェアは携帯電話全体で見れば高々1%だが、アプリケーションのダウンロード数という意味で言えば、既にJavaアプリすべてを会わせた数字を上回っているというデータもある(参照←これは米国のケース)。既に「iPhoneが売れているからアプリを作る→面白いアプリが沢山あるからiPhoneを買う」というサイクルが始まっており、少なくとも市場規模でSony PSPやNintendo DSと並べるプラットフォームになることは目に見えている。
同じことが,他の国―とりわけ日本で起きるかどうか,大いに気になるところである。最近頻繁に目にする,アプリを全面に出した CM はそれを狙っているのだろう。ただし,このサイクルが米国のみにとどまるなら,iPhone に固執していると世界市場に進出できない,という主張の説得力が増すように思える。だが,全世界のモバイル市場の数%のシェアしか得られないことは,ビジネスとして問題なのだろうか?

中島氏は別のエントリで,Macintosh は「パソコン業界のBMW(ルイビトンでも良い)の位置を確固たるものとして、キャッシュフローを生み出し続けるように保つことがとても大切である」と述べている。同じことが,iPhone にも当てはまるとしたら,本来は異なる市場といってもよい Nokia のシェアをさほど意識する必要はない。そもそもクリエイティブなビジネスにとって,シェアはあまり意味のある指標ではないように思う。

重要なのは,そのビジネスを持続・発展させるうえで最低限必要な販売量を充足しているかどうか,ではなかろうか。それさえ突破できれば,「iPhoneは世界中に1700万台。Nokiaは2010年末までに4億台の端末がOvi Storeに対応すると考えている」といわれても全く気にとめなかった(と上述のコラムにある)シリコンバレーの技術者たちは,何ら非難されるいわれはない。

ところで,以下の一連のエントリでは,中島氏がワシントン大学のMBAコースに提出したレポートをもとに,アップルに関するSWOT分析などが展開されており,eBusiness 企業の戦略を考える資料として大変有用である:
AppleをAppleにしているもの
Appleの将来について考えてみる
Appleが打つべき次の一手

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