今日も午前中だけ消費者行動研究コンファレンスに参加。大学に出て計算と論文執筆に取り組む必要があったので(しかも出足が遅れたので),聴講したのは3件のショートセッションだけであった。そのあとにも聴きたい発表がいくつもあり非常に残念。しかし,#jacs2010 というハッシュタグのおかげで,ある程度はフォローすることができる。さて,聴講した3件の報告とは・・・
それに対して,研究とはそういうものだというのが1つの模範解答だ。当たり前に思えることの背後に,どういうメカニズムがあるかを科学的に究明し,体系化するのが研究である。そして,過去の研究と整合的に結びつけることで,大仰にいえば人類の知的遺産になると。それはそうなのだが,重要なのはそこにサプライズがあるかどうかだ。「好きだから見るのではなく,見るから好きになる」というのは間違いなくサプライズ。しかもそれには,大きな実務的インパクトがある。
解釈レベル理論にしても,過剰装備がなぜ生じるかという問題に結びつけたことで成功した。当たり前だと思っていることが,実は当たり前でないことを見出す問題の発見。昨日片平先生の講演でも語られた「ブ・ジャデ」ともつながる。その意味で,仲良しクラブの「コラボレーション」からそうした発見が生まれるのか ・・・なんてことを考えながら,明日の朝,無事に計算が終わっており,その結果に何がしかのサプライズが含まれていることを願って,そろそろ寝ることにしよう。
安藤和代氏(千葉商科大学)「語り手本人に及ぶクチコミの影響」・・・ポジティブな体験を語るかネガティブな体験を語るかでクチコミの目的が変わり,語り手本人の対象への評価もまた変わってくるという仮説。面白い視点だ。関連する心理学的研究を丹念に調べ,さまざまな概念を精妙に組み合わせてモデル(パス図)を作るのは見事。扱おうとしている現象に比べてモデルが複雑すぎる気がするのは,ぼくが消費者行動研究の流儀を体得していないせいだろう。というわけで,聴講したのはいずれも選好の形成や変化,あるいはその誘導に関する研究であった。消費者行動研究の本流の1つである社会心理学において,態度変容というテーマが長く研究されてきたことを考えると,そのこと自体はさして不思議ではない。そしてこの問題が,実務家にとっても大いに関心があることはいうまでもないだろう。ただ,研究によって語られることの多くは,実務家がすでにわかっていると感じる話ではないだろうか。つまり,そんなことは当たり前だと。
中川宏道氏(流通経済研究所)「好きだから見るのか、見るから好きになるのか?~セールス・プロモーション研究における視覚マーケティングの視座~」・・・急に聴衆が増え,立ち見が続出した。「見るから好きになる」ことを示した下條信輔氏らの研究を踏まえて,デジタルサイネージが消費者選好に与える影響を,アイトラッキングを駆使しながら検証している。その結果,店頭SPは,本来売れるものをロスなく売るという従来語られていた目的を超えるものになる。
石井裕明氏,阿部周造氏他(早稲田大学)「消費者の評価・選択軸の変化と解釈レベル理論」・・・さらに聴衆が増加。解釈レベル理論は,対象への心理的距離によって重視される属性が変わると主張する。これが,Feature Fatigue 研究の理論的基礎になった(購入前は高機能を求めるが,購入後はユーザビリティを重視する)。早大全体の重点プロジェクトとして研究が始まり,さらに科研費も取得したとのこと。今回は,予備的研究としてのグルインの結果が報告された。
それに対して,研究とはそういうものだというのが1つの模範解答だ。当たり前に思えることの背後に,どういうメカニズムがあるかを科学的に究明し,体系化するのが研究である。そして,過去の研究と整合的に結びつけることで,大仰にいえば人類の知的遺産になると。それはそうなのだが,重要なのはそこにサプライズがあるかどうかだ。「好きだから見るのではなく,見るから好きになる」というのは間違いなくサプライズ。しかもそれには,大きな実務的インパクトがある。
解釈レベル理論にしても,過剰装備がなぜ生じるかという問題に結びつけたことで成功した。当たり前だと思っていることが,実は当たり前でないことを見出す問題の発見。昨日片平先生の講演でも語られた「ブ・ジャデ」ともつながる。その意味で,仲良しクラブの「コラボレーション」からそうした発見が生まれるのか ・・・なんてことを考えながら,明日の朝,無事に計算が終わっており,その結果に何がしかのサプライズが含まれていることを願って,そろそろ寝ることにしよう。