Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

政権交代と政治主導

2012-09-26 17:48:29 | Weblog
民主党は3年前の総選挙で圧勝した。そのとき民主党が掲げた公約はいろいろあったが,その目玉の1つが「政治主導の実現」であった。今年3月に出版された本書は,そのプロセスと成果について,冷静な筆致で検証している。

本書の編者である御厨貴氏は,いうまでもなくオーラルヒストリーで有名な政治学者である。ただし,この本を実際に執筆しているのは,東大の御厨研究室で育った若手の研究者たちである。そこには現役の官僚たちも含まれる。

したがって,前半のマクロ的な分析に続き,中盤では「政治主導」の現場における「参与観察」の結果が報告されている。その立場に相応しく,政治主導への順応と抵抗,肯定的評価と否定的評価とが「バランスよく」書かれている。

「政治主導」の教訓: 政権交代は何をもたらしたのか
御厨貴(編)
勁草書房

政治主導とは,自民党政権時代,省庁と党の部会が連係して政策を決定していたスタイルへのアンチテーゼである。そのため多数の国会議員が政務三役として省庁に送り込まれ,官僚に細かな指示を下すことになった。

政治主導には,官邸が国家戦略局を通じて強力に省庁間調整を行うことも含まれていたが,国家戦略局は設立されることはなかった。その結果,予算編成に当たって重要な省庁間調整は,官僚たちの手に委ねられていく。

長い年月をかけて育った官僚制の生態系は想像以上に強靱で,生半可な「政治主導」などすべて飲み込んでいく。しかし「反官僚」の政治的エネルギーはまだ消えていないように思える。新たな政官の生態系はどうなるのか・・・