Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

「愛の消費者行動」研究

2012-09-23 09:12:30 | Weblog
19日の夜,JIMS部会で久保田進彦先生(東洋大学)から「ブランド・リレーションシップ」(BR)に関する報告を聴く。この概念が登場したのは,1998年の Susan Fournier の論文が端緒とのこと。歴史の新しい分野である。

その後,Jennifer Aaker を始め多くの研究者が参入し,様々な研究がなされている。久保田さんはそれらを依拠する中核概念によって以下のように分類する。

Aaker -適合性(congruity)
Fournier - パートナーシップ
Park - 愛着(attachment)
Batra - 愛(Love)
Escals - 同一化(identification)

このうち,最初の概念は自己とブランドの類似性をBRと考え,残りは自己とブランドが時間を通じて結びついていくと考える。特に最後の「同一化」ではその「構造」に注目する。久保田さんの立場はこれに近いとのこと。

このように既存研究を整理したうえでBRの測定が行われる。まず認知(一体感),情緒(愛着や喜び),評価(誇り)の3因子の2次因子としてBRが計算される。対象は回答者が最も好きと想起したブランドである。

久保田さんは,BRが購買継続意向,推奨意向,支援意向という3つのレベルのいずれにもプラスの影響を与えることを示した。ブランド認知やブランド自体のイメージは,基本的にBRを経由してそれらに影響する。

別の側面として,BRが高まると,そのブランドを他とは比較したくない,比較しないという効果があることも示される。これを「絶対的差別化」と呼び,ブルーオーシャン戦略が目指すものと同じだと論じられる。

では,どのようにBRが形成されるのか。久保田さんは同一サンプルに対する2時点の調査から,BRの形成要因と効果を区別して分析する。その結果,BRの確立前後で「因果」の方向性が変わることを示さしている。

最初に紹介された研究の対象ブランドにプロ野球の球団名が散見されたことから,ぼくはすぐに広島カープのことを思い浮かべた。BRの成果変数として最上位にある「支援」はまさに「樽募金」の歴史が典型例である。

つまり,この枠組みはぼくのカープ愛やアップル愛を説明する有力な道具立てになる。ただし,自分としては無意識的で情動中心のプロセスも注目したい。愛について語り始めた消費者行動研究から,今後目が離せない。