Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

MASコンペお疲れ様

2008-03-04 23:29:37 | Weblog
今日はMASコンペティション。中澤君はなかなかしっかりした発表ぶりで,時間管理といい,質問への対応といい,よく頑張った。だが,残念ながら入賞せず。優秀賞を受賞したのは例年のように「歩行」や「交通」に関する研究だ。それぞれユーモラスで誠実な発表であったが,昨年のように「完敗」したといった感覚はない。

社会や市場の現象を対象としたシミュレーションには,人やクルマが空間上を動くようなわかりやすさはない。エージェントの行動を外から観察してモデル化することもできない。シミュレーションの結果の視覚化だって難しい。その難しさに同情してくれた審査員の先生もいた。それでも「選にもれた」のは,研究の限界が大きかったということだろうか・・・。

この研究の限界は,誰かにいわれるまでもなく,自分たちが最も強く感じている。だが,社会科学的な研究と純粋に工学的(?)な研究を果たして同列に比較できるのか・・・もちろんそれは,このコンペに限らず「賞」が登場する場ではよくある問題だ。あくまで個別領域での意義を求めて研究しているのだとしたら,真の評価を問う場は他に求めなくてはならないだろう。

寺野先生,中澤君,山田君と中野坂上の蕎麦屋で軽い二次会。寺野さんの話を聞きながらぼくが勝手に感じたのは,エージェントベースの研究者は出自の研究領域でも,あるいは方法論的に近い異なる分野の研究者との交流の場でも孤立しがちかもしれないということ。そして,それにくじけず研究に邁進する気概が重要だということだ。

革命前夜だと語りたい夜

2008-03-04 01:28:09 | Weblog
JIMS部会。それぞれIT企業で研究に従事する松山さん,吉田さんからエージェントベース・シミュレーション研究のご発表をいただく。いずれも,実データから消費者間のネットワークを構築し,そこでの情報伝播のダイナミクスをシミュレーションすることで実務に役立てようという意欲的な研究だ。エージェントベースを実世界で活用しようとする試みが,着実に蓄積されつつあることに感銘を受ける。

二次会で議論になったように,実データ・・・特に質問紙調査の結果に,消費者間相互作用を探る上での信頼性がどれだけあるかという疑念が当然わいてくる。しかし,ぼくが酔っ払って主張したのは,条件さえ整えば,個々の回答を超えた調査結果全体から,一種の「大数の法則」によるお告げあるのでは,という予想だ。本当にそうかどうかは,実践を通じて証明するしかない。

そして,それを完成させるのは,シミュレーションによる「可能性マイニング」だろうということ。その方法論を今後追求せねば・・・。いずれにせよ,研究について話を聞きたい人をお呼びし,とことん話を聞き,志を同じくする仲間とがんがん議論するという最高に贅沢な時間。そのネットワークの果実を,今後大きく実らせなくてはならない・・・。

明日はMASコンペだ。わが研究室の成果を世に問う「当面最後の」機会となる。