Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

カープ2.0は可能か?

2008-03-20 14:09:38 | Weblog

パリーグが開幕,ダルビッシュ投手の活躍で日本ハムが初戦を飾った。小島克典『プロ野球2.0』(扶桑社新書)に登場する北海道日本ハムファイターズ球団の藤井社長は,前職はJリーグ・セレッソ大阪の社長で,同チームの黒字化に貢献した実績を持つ。Jリーグからパリーグへ・・・最近のパリーグ人気の背後には,経営層の充実があったということか。

本書は,著者が立命館大学で行ったスポーツビジネスの講義録。多彩なゲストスピーカが登場する。その一人が,エージェントとして多くの日本人野球選手の米大リーグ行きに関わった団野村氏。彼によれば,日本の球団は儲かっていないという理由で選手の給料を抑制し,大リーグのように事業拡大することで高い給料を吸収しようとする発想がないという。

プロ野球2.0 (扶桑社新書 24) (扶桑社新書 24)
小島 克典
扶桑社

このアイテムの詳細を見る

 団野村氏といえば,「わが」広島カープともめた歴史がある(「セクシースポーツ・エクスタシーコラム」が指摘するように,それはカープのローカル性を示す結果になった)。最近,「純正野球ファンのメモ」には

いずれにしてもカープを見ていると「歯がゆい」の一言。

パリーグではロッテや日ハムのようにスカウトと育成で強いチームを作り上げているのに、セントラルではそういうモデルが通用しないのだろうか。いや、そうではない。カープは真剣にファームと育成で勝とうという気概を感じない。フロントも首脳陣も、ファンにもどこか逆指名とFAを言い訳にしているように感じるのである。

と書かれていた。 親会社の広告塔ではない唯一の球団として,優れたスカウティングによって前田や緒方を育てたチームとして,イノベーションが期待されたはずなのだが・・・。

著者は最終章で,ウェブ2.0の原理をプロ野球に適用することを提案する。その一つが,協調フィルタリングなどを用いた,ファンに対するカスタマイズされたサービス。もう一つが「ネットワーク効果」の活用。ファンがファンを呼ぶ仕組みをつくるということだが,その具体策は明確にされていない。

特定チームのファンになる心理は,消費者の選好形成のなかで最もエモーショナルで,偶有的で,かつ持続的であるように思える。選好形成の研究材料としても,サービス&リレーションシップ・マーケティングの研究材料としても,興味深い。