Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

国際非線形科学会議

2008-03-14 22:59:07 | Weblog

昨日から,中央大学駿河台記念会館で開かれている国際非線形科学会議を聴講。まずは,サービス・サイエンスのセッションに出る。トップバッターは,昔TAを勤めてもらい,いまや某大学で研究者として一人立ちした渡辺君だった(その直前に挨拶されて思い出した・・・御免!)。米国内の貨物航空輸送で,ハブ空港をどこに立地すべきかをOR的にアプローチしている。彼の計算では,最近の最適立地はNYのJFKだという。

次いで,寺野さんがロングテール分布のテール部分に位置する製品を対象に,製造者,流通業者,消費者の間でマッチングを行うリコメンデーションシステムを提案。それに対応するエージェント・シミュレーションも報告された。人の間だけではなく,モノの間にもネットワークを考えている点が何を意味するのか,ぼくにはよくわからなかった。マーケティングなり経済学なりの伝統を引きずると,そこは大いに気になる。そんなことは気にしない,という「ラジカルな」立場もあり得るとは思うが・・・。

サービス・サイエンスのセッションでは,そのあと,ネットコミュニティの動態をSOC(自己組織化臨界現象)として理解しようという研究,店舗内の買い回りを選択モデルで分析し,シミュレーション・モデルに展開した研究,電子マネーのような消費者と店舗の双方で二重の普及が起きる現象のモデル化,日本の非製造業(ほとんどが広義のサービス産業)の生産性の低さが非上場の中小企業に起因することを示す実証研究があった。どれも力作で「サービス・サイエンス」の幅広さを示すものだが,サービス・サイエンスというものの核心が逆に見えにくくなる。

初日は他に,心理学系のセッションにも出た。そこでは「懐かしの」カタストロフ理論が扱われていた。初めて聞いたが,データからカタストロフのモデルを推定する研究が,連綿とあるらしい。最後の発表では,そこに有限混合モデルを適用することが提案されていた。へーという感じ。

昨夜いったん研究室に戻って「仕事」をしたため,本日は午後3時から参加。ちょうど秋山さんが Learning Game の発表をしているところだった。他にも人間の認知能力の限界を明示的に扱ったゲーム理論系の研究があった。人間の行動が限定合理的であるほど,社会的に望ましい結果を招くことを示す研究として,だいぶ以前のことだが岩井克人氏の「不均衡動学」があった。当研究室のアフィリエイト広告モデルもまた,利益追求者が増えすぎると市場が縮小することを示している点で,こうした研究の系譜に属しているといえる。

懇親会に参加,何人か若い研究者や院生と話しをする。みんなピュアに自分の研究を追求しており,素晴らしい・・・だが(だから)共通の話題を見つけるのに苦労したりする。人間関係において,共通の話題をふんだんに供給できる仕組み(天気の話題,共通の知人の噂話,・・・)が重要である。それにしても「非線形科学」とは何だろう? ・・・物理学,経済学から心理学まで多様な分野にまたがり,なかには怪しいものも含む。世界は広いのだ。