Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

統計学って役に立つんだ

2008-02-19 22:07:40 | Weblog
今日は,某外資系食品メーカーの社長をお招きして,ぼくの授業で日本市場の特殊性と一般性,そこでいかに競争するか,グローバル企業の経営の特質などを話してもらう。複雑な流通経路や物流費・メディア費用の高さなど特殊性はあるが,健康志向,ローカル性の重視,といった食のトレンドは世界共通だ。そのなかで,世界で得た経験を共有し,相互に steal with pride することがグローバル企業の強みだという。

ふだん,ぼくの授業では抽象的な話が多く,うんざりしていたであろう学生諸君には,マーケティングの面白さを実感するいい機会になったと思う。忙しいなか,「ついに」来てくれた友人に感謝。学生からもう少し質問やコメントが出ればよかったんだが・・・いや,それでもふだんよりは,出たほうかもしれない。

イアン・エアーズ『その数学が戦略を決める』読了。データマイニングや統計的手法がいかに世の中で役立てられているかについて,面白い事例を次々と紹介する。統計学の授業の初日に,こうした話を紹介すると学習意欲がわくのではないか。データマイニングといえば「紙おむつとビール」の話だけという時代は終わった。

個人的に気に入ったのは,カジノのお客さんがいくらスッたら二度と来なくなるかを予測,そうなる寸前に,今日はツキが悪いみたいだから,そろそろやめてバーで一杯・・・などというメッセージを出す話。だが,こうした高度なCRMが進むと,予測のベースとなるデータが手に入らなくなるのでは・・・と心配になる。

驚いたのは,公共政策の事前評価に無作為化された実験が用いられているという話。たとえば,「負の所得税」を,無作為に抽出された人々にだけ適用し,対照群と比較する。そんなふうな政策の実験が,米国はもちろん,開発途上国などでも行われているという。政府がそこまでするのだから,企業はもっとやっているはず・・・日本ではどうなんだろう。

月末に向け,いろいろな用事が目白押しだが,電車に乗る機会が増えると,読書の時間も増える。あとは近くを見るメガネ・・・だ。

ここ数日中に入手した本

P.グリッツマン,R.ブランデンベルグ,最短経路の本 レナの不思議な数学の旅,シュプリンガージャパン ・・・対話形式で,最短路問題や巡回セールスマン問題が丁寧に説明されている。色刷りの絵が楽しそう。ネットワークを分析に使う以上,最低限のグラフ理論の理解は欠かせない。

三品和弘,戦略不全の因果 1013社の明暗はどこで分かれたか,東洋経済新報社 ・・・重いタイトルである。