Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ニッチ再考

2006-10-14 00:50:58 | Weblog
昨夜,ある大手小売業の方とお話していたとき「ニッチ」ということばが出た。ニッチということば自体はずっと以前からマーケティングの世界で使われてきた。いわば手垢がついたことばだ。しかし,ロングテール論以降,そのことばはより生き生きした意味を持ち始めている。夕べ「ニッチ」ということばを取り巻いていた文脈もまた,そちら側に属する。

今日,Preference Dynamics という大げさなタイトルの投稿用アブストラクトを書きながら,心の奥底で,新たな(動的)ニッチ論のイメージがうごめいていた。アブストラクト自体にはそれを明示的に盛り込めなかったし,現段階でそうすべきではないと思うが,自分の研究テーマのいくつかをつなぐ,地下水系があることがはっきりした。

ニッチがいかに微細化していくか・・・という問題意識は,バブルの頃によく聞いた,無限の差異化プロセスなどという議論とどう違うのか・・・という話になれば,岩井克人氏の「キャベツ人形の資本主義」(『ヴェニスの商人の資本主義』所収)が思い起こされる。そこでいう差異化とは,他者に対する差異化であるが,ロングテールにおけるニッチの動的生成は,それだけで説明されない何かであるように思う。

いくつかのアイデアが頭のなかを駆け巡る・・・というと聞こえはいいが,要は整理されていない。いずれにしろ,ニッチということばが新しい意味を持ち始めたことに,マーケティングあるいは消費者行動の研究がもっと反応しなくてはならない。