Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

消費者調査 進化の方向

2006-07-20 08:17:10 | Weblog
昨夜のワールドビジネスサテライトでは,ITを使った消費者調査が紹介されていた。まずはインタースコープの「チャット評価グリッド法」。従来,半構造化インタビューの対象者になりにくかった層へのアプローチを図っている。

番組のなかで,モニタの女性が「自分の回答が実際の製品開発に反映されたりするとうれしい」というようなコメントを言っていた。だから調査に積極的に参加するという話になると,従来の消費者調査における,ランダム・サンプリング→代表性(スープはかき混ぜてから飲め)という論理から見て,かえって困ったことになるかもしれない。しかし,従来の調査においても,調査に協力する/しないというフィルターは実は存在したし,その重要性を指摘する研究もあった(と記憶する)。

それを考えると,対象者の能動性・積極性をむしろ前向きに評価し,活かしていく発想が必要かもしれない。自分の意見が反映されるという喜び,楽しいインターフェースで回答することの快感が「調査の質」をいかに改善するか。世界は広いのだから,そのへんを示した研究がすでにあっても不思議ではないが,どうなんだろう。

調査の質という考え方はあいまいに聞こえるが,現場感覚としては確かに存在する。その考え方を推し進めると,調査対象者の選択についても,面白い展開が出てくるだろう。マーケティング・リサーチには,社会調査とは違う進化があり得る。

ところで初耳だったのが,タナックスという会社の店頭購買プロセス調査システムだ。商品にICタグをつけ,買い物客が何秒その商品を手に取り,結局棚に戻したのか買っていったのか,などを測定している。動線追跡システムと組み合わせると,店内行動はますます立体的に測定できるなあという印象。そうしたデータから何を掘り起こすか。