クアトロの休日にクアトロ夫婦は、柏方面からだと筑波山のシルエットを追うように走るTX(つくばエクスプレス)で守谷へ向かった。守谷駅からバスに乗り美味しいと云う噂を聞きつけた、とある蕎麦屋へ出向いた。
その蕎麦屋の最寄りのバス停に降りキョロキョロとしていると、
「あんたら蕎麦屋を探しているのかね、それならそこを左に入ったとこだよ」
何で、蕎麦屋を探していると解ったのか謎である。守谷の住人はエスパーなのかもしれない。
ともかく、目的の蕎麦屋に着く。入口には水車小屋があるが、どうやらこれは飾りのようだ。暖簾をくぐると、「お客様のおなーり」と出迎えられる。大仰な店である。
席に着きお品書きを見ると、やたらと講釈が書かれている。
蕎麦つゆには薬味を入れるなとか、蕎麦はつゆをつけすぎるなとか、姿勢良く食べろとか、蕎麦が来たらおしゃべりするなとか書いてある。さらに、ご主人は話好きなようで、料理を運んで来ては食べ物の講釈をしたり、つまらないジョークを披露していく。
そば屋で酒を楽しまないのは邪道だと信じているクアトロの父は、まずはお酒とおつまみを注文する。そのために電車とバスとエスパーの力を借りてここまでやって来た。
ビールはさすがにアサヒビールの工場がすぐ近くにあるのでスーパードライである。日本酒はさほどの品揃えはないが清酒・原酒・にごりを選べるようになっている。何品かおつまみとお酒をいただいた。
お腹がお酒とおつまみで落ち着いたところでいただく蕎麦が美味しいのだ。ざる蕎麦を注文すると、すぐに運ばれてきた。蕎麦だけは、注文してすぐに出来る店が旨い。たらたらと時間がかかる蕎麦屋に美味しい店は無いのだ。
蕎麦は細切りである。しっかりと冷水で締められてあり腰がある蕎麦だ。角がとれ均一な切り口のその蕎麦は中々のものだ。ややウグイス色の麺は磨かれた蕎麦の色である。ただ香りは特別では無かった。講釈の多かった蕎麦つゆはたしかに旨みが濃厚である。蕎麦湯で伸ばしてもその実力は堪能出来た。結局、蕎麦つゆと蕎麦湯まで完食してしまった高血圧のクアトロの父である。
その後、行きつけの立ち寄りの湯に浸かり、夕方には富士山のシルエットを追って走るTXで帰ってきた。
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