陣太鼓がゴンゴンと鳴っているような気がする。クアトロウは遂にパーティーの主役を務める日がやって来た。会社の忘年会をとあるフレンチで開催することになったのだ。さあ、楽しい会話をクアトロウは引き出せるのだろうか。赤穂浪士の討ち入りのような心境である。
先頭に立ち、ソムリエのチェックも堂々と受けたクアトロウは、席に着いた。今日は料理が事前に決まっている。それに合わせてワインを相談すれば良いのでソムリエさんとのやりとりはスムーズに行くだろう。
その前にまずは、食前酒を頼みたい。乾杯のお酒も兼ねてしまうか。当然スパークリング・ワインの登場だ。スパークリング・ワインをグラス売りしているところは、中々のグレードだ。それがシャンパンだと高級店だろう。スパークリング・ワインは日持ちがしないから、グラス売り出来るところは繁盛店もしくは、ロスを覚悟している高級店となる。このお店はさすがにシャンパンをグラス売りしていたが、今日はこちらの人数が多いので、ボトルで勧めてもらう。
「まずは、泡物が欲しいのですが」
クアトロウは気取ってみた。
「それでは、シャンパンの某はいかがですか」
ここで、財布との相談である。いきなり高級シャンパンから入ると後のワインも高級路線へ行ってしまう。今日のクアトロウはやや抑えめの予算で進めることに決心している。
「イタリアのスプマンテか、スペインのカバでも良いですよ」
「その代わり何かリキュールを入れてみてください」
クアトロウはキール・ロワイヤルあたりを使う算段だ。
「今日は栗のリキュールがあるのでそれをクレマンで割ってお出ししましょう」
(注・クレマンはフランスのシャンパーニュ地方以外で造るシャンパーニュ方式のスパークリングワイン)
『うむ、この店は中々やるな』
『各々の方、油断めさるな』
大石内蔵助になったクアトロウである。
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