クアトロの父が子供の頃の話。
隣の家は屋台のおでん屋だった。
夕方になると夫婦で屋台を引いて駅の方へ出かける。
無口な親父さんが車を引き、優しい奥さんが車を押す。
その後ろ姿が子供心にもとても温かく見えた。
そのおでん屋さんでは、子供がふたりで留守番をしている。
ひとりの子供は、戦争孤児だったと聞いている。
クアトロの父も一緒にチャンバラごっこをして遊んでいた。
赤胴鈴の助の時代だ。
クアトロの父が大人になってもその屋台は続いていた。
今日のような冬の寒い日、ビニールで覆われたその屋台に滑り込み、お尻は寒風にさらされつつも、おでんの湯気が体を温めてくれる。
「しんちゃんは、厚揚げが好きだったね」
毎日煮込まれたおでんのスープの中から厚揚げを探してお皿に取ってくれるおやじさん。
たまごにつみれにコブと熱々のおでんを食べたあとの仕上げには焼きそばを焼いてくれる。
これが実に旨い。
いまだにクアトロの家ではおでんの後に焼きそばを食べるのが恒例となっている。
あの、おでんの味にはあのご夫婦の戦争をまたいだ歴史が煮込まれているのかなと、今になって想像する。
おでんは、クアトロの父のソールフード。
クアトロの魚料理などを楽しみ、仕上げにお気に入りのパスタを食べる。
あなたのソールフードになりたいクアトロである。
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