Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

上岡敏之指揮読響第511回定期演奏会2012.01.25批評 後編(No.1987)

2012-01-27 19:40:08 | 批評
 糖尿病で体が衰えているので、「2日連続演奏会」はキツい。一昨日、書いている途中でそのまま眠り込んでしまった。昨日も体力戻し最優先。明日~明後日も2日連続だが体力もつのだろうか?


pppp←→fff の「マーラー指示」を見事に再現した 上岡敏之指揮読響!


 「普通のマーラー観」だと、前号で書いた点を重視する。私高本も同じだったことをここに記す。上岡敏之 は違った。

「マーラーのスコア通り」を実現させよう。上岡敏之自身の指揮 + 読響 ならば可能だ!


と。上岡敏之 が重点を置いたのは次の通り。

上岡敏之 マーラー交響曲第4番「天上の生活」構想



  1. 「デュナーミクの巾が最も広い第3楽章」に重心を置く


  2. あちこちに山ほど出てくる「スタカートの16分音符」を『モーツァルトのノンレガート』風に徹底して演奏する(弦だけでなく管も!)


  3. デュナーミクは「スコア通り」にはっきり切り替え、不要な「間」は取らない。「スビト」!


  4. テンポも「スコア通り」。例えどんなに難しくとも「棒」で実現できる!!


  5. 管楽器編成が第1番~第3番に比べて小さいが、「イメージとしてホルン7本分」を「4本」で吹いてもらう



 う~ん、書くのは簡単なんだが、普通「実現するか?」と腰が引けることばかりなのだ。第1楽章「練習番号1」の3小節目には「ppp」が出てきて、その4小節後には「pp でオクターブでチェロがスタカートの16分音符16ケ連続」とか(爆

 出来の悪いオケ(プロオケです)だと、ここの音程合わせるだけでどれだけ時間が掛かることやら。大概はスラーを掛けて演奏する。それで誰も不満は言わない。オケメンバーも聴衆も。だが 

上岡敏之 + 読響 は「マーラー通り」に演奏した。交響曲第4番全体を



 「言うは易し、行うは難し」について、もう1点だけ書く。

第2楽章スケルツォで「コンサートマスター」が「ロンド主部」(← 当日解説は別解釈)で、「長3度高く調弦したヴァイオリンでソロ」を弾く。その時に「コンサートマスター代理」をする奏者で、第2楽章は決まる!


 大概のオケは、ここが弱点になる。「切り札」を切ってしまって、「次は無いですよ(泣」状態。あぁ、「印象批評の時の私高本状態」って言えば、解り易いかも(爆

 だが、読響は違う。

「コンサートマスター = 藤原浜雄」だけでなく、「影のコンサートマスター = 小森谷巧」も仕込み済!


であった。「第2楽章から崩壊するのがマーラー交響曲第4番」の通常なのだが、(特に良くなった点も無かったが)何1つ変わらぬ表情で第2楽章が演奏された。これは稀有なことなのだ。ウソだと思ったら、CD聴いてみな(爆

 藤原浜雄 が素晴らしいことも聴かせて頂いた。小森谷巧 が素晴らしいことも聴かせて頂いた。


 「マーラーの弟子」で最も有名な ブルーノ・ワルター は「マーラーの指示通りに必ずしも演奏していない」ことで有名。多くのヒョーロンカは「ワルターの解釈」と思い込んでいる。
 だが、この日の「上岡敏之 + 読響」を聴いた私高本は感じた。

これだけ「マーラー通り」徹底したら、オケメンバーが疲れて反発するのではないか?


と。結論を先に書く。

読響は、「マーラーの指示」を「上岡敏之の棒」経由で受け取り、受け入れ、聴衆に伝えてくれた!


 なぜ、可能なのか? 裏返せば、ブルーノ・ワルター指揮のオケでさえ、反発しかねないような

『超神経質なマーラーの指示』を「棒 + 左手 + 全身」で明解にオケに伝えた!


ことを私高本はここに明記する。「この瞬間、最重要なパート」を全て把握し、両手で「キュー出し」明解! そうそう、

マーラー交響曲第4番のピーク = 第3楽章「練習番号13」で調号がト長調に変わったところ(実際の音はニ長調)の「pppp」の静けさ!!!


 これまで1回も聴いたことが無かった「静寂」がサントリーホールを覆った。「読響定期会員」は極めて上質な顧客なので、静寂をブチ壊したりしない、も信頼の証。


 ・・・で、手放しで絶賛したいところだが、第4楽章に登場した ソプラノ = キルステン・ブランク が大ハズレ(泣

第4楽章登場の キルステン・ブランク は「落ちる、走る、ぶら下がる」の「悪の3拍子」揃った愚演!


だった。完全に「峠を下りきったソプラノ」だった。高いロングトーンだけは響かせられるのだが、下降音型でぶら下がる、すぐに走る、あげくに落とす、だった(爆涙

 オケメンバーの精神が切れずに終曲まで持っていけたのは、私高本には信じられない。あれだけ「事故だらけ」だと、大抵のオケは粗くなるものだが、「読響だけ」は最後の最後まで精密だった。

 終演後はしばらく静寂が続き、(風邪かインフルエンザの人の「空咳」だけが2~3回鳴り)上岡敏之 が手を完全に下ろしてから圧倒的な拍手と「ブラヴォーの嵐」! だが、ソプラノ単独で登場(指揮者なし)の時は「ブーイング」は掛らなかったモノの、「ブラヴォー皆無」& 拍手が小さくなった。読響定期会員 ってキツいわな > だからこそ「良い演奏」続きなワケだ。


 モーツァルト交響曲第34番ハ長調K338 について、簡単に述べる。

「モーツァルトのノンレガート奏法」徹底して下さい。マーラーでも使いますから、と言う 上岡敏之 のメッセージ!


であった。ざっくり、「後宮からの誘拐」K384 以降を「モーツァルト後期」、その前を「モーツァルト前期」とすると、K338 は「交響曲で前期の最後の作品」なのだが、人気は薄い。K297 とか K183 より演奏頻度低いんですよね。
 その「無名性」を逆手にとって、

マーラーが「モーツァルトから学んだ手法」を1回の演奏会に盛り込んだのが 上岡敏之


だ。凄い! ここまで「読みきった」プログラミングだったんだ!! 諸君、脱帽したまえ!!!


あぁ、私高本の批評を確認したい人は「4月に日本テレビ系」で「深夜の音楽会」で放映するからみてちょ。おそらく「マーラー」だけ。モーツァルトも、あんな地味な曲でいきなり前プロから「ブラヴォー」掛かった名演なんだから、何とか都合付けて放送して欲しいモノだ。P席1列右端のカメラ見ていたら、「収録だけはしていた」ハズ。

「読響のベスト」の1つ がここに有った公演 = 2012.01.25上岡敏之指揮定期


だった。


 この演奏会は今後いろいろと(良い方にも、悪い方にも)引用される演奏会になることだろう。批評前編を書いていた時には、思い出せなかったのだが、「上岡敏之は、誰かに似ている!」と思って、演奏会を聴いた。カンブルラン や 下野竜也 ではないし、誰だったんだろう? 新国立劇場登場の指揮者でもないようだ。疲れが癒されてはっきり思い出した。

『上岡敏之の指揮姿 = グスタフ・マーラーのカリカチュア』と瓜二つ!


である。揶揄もされるし、反発もキツいぞ(爆

 私高本は「上岡敏之の感性」をマーラーについては全面的に信じる。この公演で唯一残念だったことは、ソプラノ。

老田裕子 で聴きたかった!


が実感。「天上の生活」も素晴らしかった! ピアノ版だったが。小節数も同じだしなあ。あぁ、演奏家2人以外で聴いていたのは私高本だけだったか! > 今年秋の公演の昨年秋のリハーサル
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