Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

神々しい喜びよりも

2012-07-10 | 雑感
訃報が相次いでいたがそれ所ではなかったので書いていなかった。二人ともオペラ歌手である。偶々二人ともベーム指揮の「魔笛」の名録音盤で歌っている。一人は、フランツ・クラスでザラストロ役として有名で、ラファエル・クーベリック録音やバイロイトでのピエール・ブーレーズのデビュープロダクションでもグルメマンツを歌っている。またはカルロス・クライバーとの「魔弾の射手」も知られている。もう一人は、ルルが当たり役となったイヴリン・リアーで、そのルルの舞台写真などは度々見ているが、寧ろ「ヴォツェック」の映画での歌唱の方が馴染みがある。

久しぶりのこの名録音に針を下ろしてみて、リアーの歌唱や芝居には聞くべきものがあったが、クラスの方はもう一つ満足出来なかった。演技的にはベルイマンの映画などもあって、よほどしっかりしたものでないと聞き栄えしない。それよりも何よりも、流石に五十年ほど前の録音となると演奏実践そのものが古臭く感じるようになったのには驚いた ― それでも先日逝去したフィッシャーディスカウが登場すると驚くべきかな、急に芸術的な新鮮な彩を振り撒くのである。来年のバーデンバーデンでの復活祭音楽祭杮落としでサイモン・ラトルが、ビーチャム指揮から始まったベルリンのフィルハーモニーカーのこの歌劇の演奏・録音史になにかを書き加えるのだろうか?

パパゲーノが語るように、神々しい喜びなどよりも酒・女と歌で楽しめばよいのだろう。とは言いながら体を解すために三十分ほど走ると、またまた身体に生気が漲ってきた。あれほど疲れていて、土曜日はクールダウンに熟睡を阻害され、昨晩もそれほど熟睡できたとは言えないのに ― 週末からバイパス道路が閉鎖になっていて旧ワイン街道である我が家の前の交通量が増えているのだ、かつてはそうだったのだと思い出す以上に一度静粛に慣れてしまうともはや我慢できないと感じる ―、いつの間にかゼーガーの2010年ピノノワールと牛フィレステーキで体力が回復している。生物の健康とは不思議なものである ― 闘病とは異なると言う意味で神々しいだろうか?


追記:時事通信より、小澤征爾さんが指揮=吉田秀和さんお別れの会-東京・発起人代表の作家丸谷才一さんは体調不良のため欠席。録音した弔辞が流され、「近代批評家全体の中で吉田さん以上に上質で品があり、分かりやすい文章で表現した人がいたろうか。彼は音楽にとって最も必要なもの、聴衆をつくった」とたたえた。 ― 流石の弔辞である。「聴衆をつくる」とはまさしく、市場で最も必要な需要の担い手である「客をつくった」と読み替えると、まさしくこれこそが消費の商業主義のなかに人々を低能化させ本質的な批評をさせない朝日新聞などに代表される日本の近代体制を形成するエスタブリッシュ層の言である。



参照:
ベルク「ルル」.wmv (YouTube)
音楽が先か、詩が先か?の回答 2012-05-24 | 音
復活祭への少しの思い入れ 2012-03-16 | 暦  2012-03-16 | 暦
文化的な企業家の歴史 2012-01-03 | 文化一般
泣きべそで「この豚!」 2012-07-09 | アウトドーア・環境
胸がムカつき痛み嗚咽する 2012-05-28 | マスメディア批評

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 泣きべそで「この豚!」 | トップ | 創造力豊かな無広告社会 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿