外相シュタインマイヤーによって、メルケル首相の外交政策が批判されている。中国政策におけるダライ・ラマ受け入れのみならず、ロシアに対する強硬姿勢などである。
これはメルケル外交のアドヴァイザー・ホイスゲン博士などの政策に注文をつけたことになる。政党色からすればCDUから更にFDPの自由主義陣営に近く、同時にEUのハビエル・ソラナの下でのスタッフであった者への反論でもあるのだろうか。
10月下旬には、ワシントンではドイツのロバート・レッドフォードと呼ばれる内閣スポークスマン、ウルリッヒ・ヴィルヘルムが、映画"Lions for Lambs"の封切りでベルリンを訪れたレッドフォード本人とトム・クルーズのスイーツルームで面談した。更にモデルともなるフィッシャー元外相や歴史家ヴィンクラーも、試写会を終えて米国の政治情勢を議論した。
こうした、ショウ効果のある政治談義が、ベルリン政府外交担当者の一角をも巻き込み様々なメディアを通して繰り広げられる意味はどうなのか?それに対して、SPDの前首相シュレーダーを初めとする、更に今回の外相の連合政権への牽制は短い声明でしかなく、レッドフォードが敢えて子ブッシュの名前を挙げずに語ったことよりも、有権者になにかを訴えるのだろうか?
社会民主党の前首相シュレーダーの外交こそ、ロシアの天然ガスや中国経済利権を自らが現在関与するロットシールト財団や基幹産業の声を代弁するだけで、有権者に何一つ具体的な選択を問いかけない。メルケル首相は、その理念に凝り固まった原子力エネルギー政策ゆえに、中国から何十億ユーロもの注文が必要なのだとSPDを非難する。
外相や外務省は、地道な外交交渉は女首相のTV前のポピュリズムなどよりも重要で、外交は従来からそのようなものだと主張する。「女首相が北京で内密にしていたダライラマ招待はこちらも腹立たしい」と、大変外交が遣り難くなったことを糾弾する。そして「第三者のサルコジが漁夫の利を占めている」だけとする。
黙って付いて来れば、上質の国内労働市場が堅持されて良い職場を失わない。外交は伝統と経験の社会民主党の専門家に任せて置きなさいと言うことだろう。それでいて、シュレーダー前首相の短いセンテンスで、「対中経済協力等の成果と重要性」をアジテートするポピュラリズム政治としかなっていなかったのではないか?シュレーダーがはじめた中国法曹界へのSPDの学術的支援交流会議は北京の抗議を以って今回初めてお流れとなった。しかし、世論を背につけた世界的な圧力の方がこうした学術的な支援よりも遥かに効を奏するのを我々は知っている。
メルケルはドイツ首相として半世紀振りにつまりルトヴィッヒ・エアハルトがリンドン・B・ジョンソン大統領にテキサスに招かれた以後、はじめて大統領の私邸に招かれた。これを以って子ブッシュは独米関係の修復を内外に示したが、多くの点で認識の一致を見た以外は、重要な政治課題「経済優先の環境保護」、「武力によるイランへの圧力」などは、ベルリンは受け入れられないと二十時間の滞在を終えた。常任理事国に継ぐ準常任理事国設置への意向などワシントン側もある程度の譲歩を見せたようだが、EUのイランへの経済制裁への決断に対しても、米国のイランへの軍事強行体制は崩さなかった。
子ブッシュ政権とそのトロッッキスト的世界統一への21世紀の歴史は、反面教師としての国際政治における国民世論の国際世論化でもあり、今後は世界連邦化へゆったりとした流れのなかで、一進一退しながら自由民主主義が国際政治に活かされる方法が模索されるのだろう。
ドイツの社会民主主義は、基幹職別労働組合をベースにしながらの保守社会主義が党内左右の両派を含めて蔓延り、現在の大連立第二位政党SPDの次期選挙での惨敗への予想に慄いている。ブラント外相以来である社会民主主義者の外相であるシュタインマイヤーがその自らの政府の外交方針を非難するにはそれなりの政治戦略があるのだろが、首相との確執は、ベルリン外務省を含めて、その政治戦略を越えていると言われる。
いずれにしても保守政党よりも、大企業つまり労働組合の声を背に、保守的な国益重視の政策を推進したい社会民主主義者が、有権者不在の民主主義体制を維持しようとする傾向は顕著なのである。
保守政治家ショイブレ内相の常軌を逸した対テロ対策に、個人情報の保護を犠牲にしてまでより管理された堅牢な民主主義体制を構築しようとするのが社会民主主義なのである。大連合与党の発案で、何れ電話・コンピューター通信の記録が半年間保存されることになり、コンピュータースパイソフトが官憲の手でばら撒かれる。
言動に気をつけなければいけないドイツ民主主義共和国体制でのトラウマが、2001年にベルリンでプーティンの演説を聞いて、「KGBが語っている、トリックだ」と言わせた野党メルケル議員の言葉になっている。
こうした首相の態度をベルリン外務省は「リアルポリティックをしばしば困難にする、ある種の東独市民運動家の見解だ」としている。FAZ新聞は今後もこの二つの基本的外交姿勢の確執は続くと述べている。
参照:
„Ein lauter Streit über die leise Diplomatie“, Wulf Schmiese, FAZ vom 12.11.07
„Grillen und Rasseln“, Berthold Kohler, FAZ vom 12.11.07
「原発を考える(下)」 (関係性)
小沢代表辞任会見 (民主党)
これはメルケル外交のアドヴァイザー・ホイスゲン博士などの政策に注文をつけたことになる。政党色からすればCDUから更にFDPの自由主義陣営に近く、同時にEUのハビエル・ソラナの下でのスタッフであった者への反論でもあるのだろうか。
10月下旬には、ワシントンではドイツのロバート・レッドフォードと呼ばれる内閣スポークスマン、ウルリッヒ・ヴィルヘルムが、映画"Lions for Lambs"の封切りでベルリンを訪れたレッドフォード本人とトム・クルーズのスイーツルームで面談した。更にモデルともなるフィッシャー元外相や歴史家ヴィンクラーも、試写会を終えて米国の政治情勢を議論した。
こうした、ショウ効果のある政治談義が、ベルリン政府外交担当者の一角をも巻き込み様々なメディアを通して繰り広げられる意味はどうなのか?それに対して、SPDの前首相シュレーダーを初めとする、更に今回の外相の連合政権への牽制は短い声明でしかなく、レッドフォードが敢えて子ブッシュの名前を挙げずに語ったことよりも、有権者になにかを訴えるのだろうか?
社会民主党の前首相シュレーダーの外交こそ、ロシアの天然ガスや中国経済利権を自らが現在関与するロットシールト財団や基幹産業の声を代弁するだけで、有権者に何一つ具体的な選択を問いかけない。メルケル首相は、その理念に凝り固まった原子力エネルギー政策ゆえに、中国から何十億ユーロもの注文が必要なのだとSPDを非難する。
外相や外務省は、地道な外交交渉は女首相のTV前のポピュリズムなどよりも重要で、外交は従来からそのようなものだと主張する。「女首相が北京で内密にしていたダライラマ招待はこちらも腹立たしい」と、大変外交が遣り難くなったことを糾弾する。そして「第三者のサルコジが漁夫の利を占めている」だけとする。
黙って付いて来れば、上質の国内労働市場が堅持されて良い職場を失わない。外交は伝統と経験の社会民主党の専門家に任せて置きなさいと言うことだろう。それでいて、シュレーダー前首相の短いセンテンスで、「対中経済協力等の成果と重要性」をアジテートするポピュラリズム政治としかなっていなかったのではないか?シュレーダーがはじめた中国法曹界へのSPDの学術的支援交流会議は北京の抗議を以って今回初めてお流れとなった。しかし、世論を背につけた世界的な圧力の方がこうした学術的な支援よりも遥かに効を奏するのを我々は知っている。
メルケルはドイツ首相として半世紀振りにつまりルトヴィッヒ・エアハルトがリンドン・B・ジョンソン大統領にテキサスに招かれた以後、はじめて大統領の私邸に招かれた。これを以って子ブッシュは独米関係の修復を内外に示したが、多くの点で認識の一致を見た以外は、重要な政治課題「経済優先の環境保護」、「武力によるイランへの圧力」などは、ベルリンは受け入れられないと二十時間の滞在を終えた。常任理事国に継ぐ準常任理事国設置への意向などワシントン側もある程度の譲歩を見せたようだが、EUのイランへの経済制裁への決断に対しても、米国のイランへの軍事強行体制は崩さなかった。
子ブッシュ政権とそのトロッッキスト的世界統一への21世紀の歴史は、反面教師としての国際政治における国民世論の国際世論化でもあり、今後は世界連邦化へゆったりとした流れのなかで、一進一退しながら自由民主主義が国際政治に活かされる方法が模索されるのだろう。
ドイツの社会民主主義は、基幹職別労働組合をベースにしながらの保守社会主義が党内左右の両派を含めて蔓延り、現在の大連立第二位政党SPDの次期選挙での惨敗への予想に慄いている。ブラント外相以来である社会民主主義者の外相であるシュタインマイヤーがその自らの政府の外交方針を非難するにはそれなりの政治戦略があるのだろが、首相との確執は、ベルリン外務省を含めて、その政治戦略を越えていると言われる。
いずれにしても保守政党よりも、大企業つまり労働組合の声を背に、保守的な国益重視の政策を推進したい社会民主主義者が、有権者不在の民主主義体制を維持しようとする傾向は顕著なのである。
保守政治家ショイブレ内相の常軌を逸した対テロ対策に、個人情報の保護を犠牲にしてまでより管理された堅牢な民主主義体制を構築しようとするのが社会民主主義なのである。大連合与党の発案で、何れ電話・コンピューター通信の記録が半年間保存されることになり、コンピュータースパイソフトが官憲の手でばら撒かれる。
言動に気をつけなければいけないドイツ民主主義共和国体制でのトラウマが、2001年にベルリンでプーティンの演説を聞いて、「KGBが語っている、トリックだ」と言わせた野党メルケル議員の言葉になっている。
こうした首相の態度をベルリン外務省は「リアルポリティックをしばしば困難にする、ある種の東独市民運動家の見解だ」としている。FAZ新聞は今後もこの二つの基本的外交姿勢の確執は続くと述べている。
参照:
„Ein lauter Streit über die leise Diplomatie“, Wulf Schmiese, FAZ vom 12.11.07
„Grillen und Rasseln“, Berthold Kohler, FAZ vom 12.11.07
「原発を考える(下)」 (関係性)
小沢代表辞任会見 (民主党)