シャルロット・ペリアンの展覧会

2012-01-14 14:17:58 | アート・デザイン・建築

鎌倉県立近代美術館・鎌倉館で開催されていたシャルロット・ペリアン展に行きました。

鶴岡八幡宮境内にあるこの美術館。初詣に訪れた人でごった返すなか、すぐ傍らにある美術館のあたりは人気も比較的すくなく、静かな雰囲気でした。時おり陽がさす程度の曇り空。空気が冷たくピンと張りつめ、日本の正月だなあ、なんてことをしみじみ感じたりします。

シャルロット・ペリアンはフランスの家具デザイナーで、ル・コルビュジエとの協働でも多くの名作家具をデザインしました。今回の展覧会では、ペリアンの日本との関係にスポットをあて展示構成されていました。

僕はあまり知らなかったのですが、日本の民芸に深い関心があったのですね。「民芸」とはそもそも柳宗悦が提唱したキーワードで、ただ実用のためにつくられた単なる道具類を、もっとも健康的で自由な「美」をもつものとしてとらえよう、としたものでした。個人的な作為がないところが肝要であるため、工芸作家が民芸に影響を受けつつ、自身の創作活動をすることは、本来的に民芸の思想と矛盾することにもなるため、きわめて難しいテーマでもあると思います。僕が柳宗悦の著書をいろいろと読んだ際の感想としては、自身の著書のなかで、世に多くある雑器を取り上げ、いかに素晴らしいかを説くことについてはとても饒舌なのですが、それらの「民芸」に影響を受けながらどのようにモノづくりを目指していくべきか、ということについては、どうも筆の調子が上がらないというか、お茶を濁すような言い方の印象もありました。ですから、ペリアンもきっと、あまり本質論に傾倒することなく、デザイナーの目として、民芸のもつ素朴でおおらかな造形を楽しんでいたのかもしれません。そうしてできあがった実験的な家具は、可愛らしく遊び心に溢れたもののように感じました。

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そんな遊び心に溢れたペリアンの家具と対照的に、坂倉準三が設計した美術館は、日本美を抽象化して表現するぞ!というような、ど真ん中のストレートを投げ込んでくるような力作。坂倉準三もル・コルビュジエの弟子です。完成当時は斬新であったであろう仕上げ材料の抽象的な使い方も、数十年の時間を経て今では、味というよりも古ぼけてしまった雰囲気。でも、1階の半屋外的な中庭空間と、そこからつながる池に面したポーチの空間は、とても魅力的です。大谷石の風合いが美しい壁の上を真っ白な天井が覆っています。陽の光がさすと池に反射して、白い天井面に水面の影がゆらゆらと映り、幻想的でとても美しい光景です。(この日は日差しが少なく、ちょっと残念でしたが・・・。)

姿かたちあるモノだけで語ろうとするのではなく、その場所で移り変わる雰囲気をデザインしようとすること。日本の庭園や日本画も、移り変わったり、目に見えないことを暗示的に示すことで、イメージを豊かなものにしようとする文化だと思います。

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姿かたちが元気ハツラツで、かわいくてカッコいいシャルロット・ペリアンの家具。

目に見えないものを活かした坂倉準三の美術館。

そんな二人の痕跡を味わいながらの、楽しい時間でした。

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