先日、機会があって、待庵の写しとしてつくられた茶室に伺いました。待庵というのは、千利休がつくったとされる、現存する唯一の茶室で、京都・大山崎の妙喜庵というお寺のなかにあります。二畳台目という極めて小さな茶室である待庵は国宝ゆえ、にじり口から中をのぞくことはできても、入室は許されません。にじり口にかじりつくようにして(笑)見学したときのエピソードは、以前にこのブログでも書きました。(2010年3月22日)
今回は、待庵を忠実に再現した茶室に入室できるのですから、どんな印象の空間なのかとても楽しみでした。
以前に待庵を訪れた時は、雨。そして今回は、まだぐっと冷え込む曇りの日。このぐらいの天気の方が幽玄な趣がでて、素敵なのかもしれません。さていよいよ室内にはいると・・・。
室内の造作や姿かたちは、すでに頭のなかにはいっているものの、大きさの感覚に不思議な変化がおこります。あれれ、広いな・・・。二畳なのに、不思議な広がりがあります。正客の席に座り、亭主の席にも座ってみました。室内の人と人は、ちょうどよい間合いが保たれるように感じます。
すぐ間近にある床の間は、「洞床 ほらどこ」とよばれる、隅柱がなく左官で塗りまわされた独特のもの。サイズはとても小さいのに、ぐーっと不思議な奥行きが感じられ、吸い込まれていくような気分になります。にじり口から眺めている分には、やはり小さな床の間という印象でしたが、自分の身を寄せることで、その魅力がつかめます。
ほとんどが壁で占められた室内に、点光源のように窓が光っていました。こちらも小さな窓ですが、人間の所作にあわせて位置が吟味された窓は、とても暗示的で、独特の情趣をもたらしてくれます。室内はもちろん暗いのですが、これでいいんだ、と思えるような落ち着きがありました。これも、部屋が小さいからこそ、それぞれの部位の存在感が増し、親密に感じられるのでしょう。
とても小さな待庵の空間は、心のなかでとても広がりを感じる、不思議な場所でした。