光の箱

2008-12-13 20:34:55 | 庭師と画家の家

建築中の「庭師と画家の家」が、工事も終盤を迎えています。左官塗りの外壁も仕上がり、内部も大工作業が終わったところから、塗装も始まりました。

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僕は住宅設計をするとき、「光の箱」をつくるようなイメージで考えることがあります。光の箱。抽象的な言い方ですが、人が一日の時間を過ごすそれぞれのシーンを考えたとき、そのシーンにふさわしい光のことをイメージしたくなります。明るい場所なのか、ほの暗い場所なのか。どのような心持ちでその場所に立っているのだろうか、あるいは座っているのだろうか。手紙を読むとき。音楽を聴くとき。それはフェルメールの絵画のような光なのだろうか。など。それらのイメージの集積として、ひとつの家ができあがっています。結果として、陰影豊かな空間ができあがることを心待ちにしているのです。住宅はとにかく隅々まで明るく、という価値観からは少し離れているかもしれませんが、それぞれの生活のシーンを引き立たせる、美しい窓と光の在り方があると思います。それらのスペースと光が集まってできあがる、「光の箱」としての家。

「庭師と画家の家」は、建物の幅が3メートル、奥行きが20メートルあります。とても細ながい家。1階はピロティで持ち上げられた、地上に浮かぶ方舟のような家です。そこには大小さまざまな窓が開けられています。陰りのあるエントランス階段から、らせん状に登って3階の光溢れる空間へ。その一連のシークエンスのなかに、いろいろな表情をもつ光を散りばめました。

ある日の建築現場。天窓から光が降る階段室で、ぼぅっと佇んでイメージしていました。画家である住まい手の絵が飾られたとき、この階段は、もはや「階段」ではなく「ギャラリー」となることでしょう。

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