学校のエピソード

2008-12-04 15:20:12 | アート・デザイン・建築

僕が講師をしている学校で、授業中、学生からこんな話を聞きました。

「葉おもてが美しく見えるので、庭を北側に配そうと思うんです。それを眺めるコーナーをこういう風につくって・・・」

これはある設計課題に取り組んでいた学生の話。東京文化会館の設計で有名な建築家・前川國男の自邸に、居間の延長としての空間をデザインするという課題でした。

住宅設計にきちんと向き合って考えるときには、ごく日常の光景が美しく豊かなものであるように繊細に物事を考えるべきだと思います。当然ながら、住宅と共にある木々や草花についても、ただあれば良いというのではなく、どのようにあるべきかを考え抜くべきです。たいていの場合、リビングはなるべく南に面するように配することが多いですから、木々や草花は「逆光」の中で眺めることになってしまいます。むしろ北庭こそが美しいと言われるのは、そのような理由もあります。美しい北庭と心地よい居場所の関係を考えるだけで、住宅についての深い論議はできると思いますが、思い返してみると、僕が学校で受けてきた教育のなかに、このような論議はありませんでした。どちらかと言うともう少し観念的な、イデオロギーとしての建築観についての話が主でした。学生当時は、南庭と北庭がどちら美しいか、という話には僕は興味を示さなかっただろうと思いますが(笑)、社会に出て、住宅設計の現場で経験を重ね、観念では読み解けない「具体の美学」の大切さを学んできた、ということでしょう。

ですから、先ほどの学生の話を学校で聞いたときには新鮮な印象をおぼえました。設計課題などではなかなか伝わりづらいこのような感性、大切にくみ取っていかねば、と思います。

余談ですが、僕が学生時代、観念的な態度にどっぷり浸かって取り組んだ修士設計の作品の一部を載せちゃいます。見た目は具体的に見えながらも、内容は歯が浮くような観念の渦でした(笑)

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