小堀遠州展

2008-01-11 12:07:49 | アート・デザイン・建築

松屋銀座で開催中の「小堀遠州展」に行きました。

小堀遠州とは、江戸時代に活躍した茶人。茶の世界というとちょっと入り込みづらい雰囲気がありますが、桃山時代から江戸時代にかけて、日本の文化のなかで大きな意義をもっていたもの。日本人として、外国の方におおよその内容を説明できるぐらいにはなっておきたいものだなあと思います。僕自身が茶の世界に興味をもつキッカケになったのは、茶室でした。「書院造り」という当時主流の豪傑な建物のスタイルの裏で、ひっそりと佇む崩れそうな庵。その窓の少ないほの暗い空間の雰囲気。その中では、粗雑な物たちが、息を吹き返し生き生きと輝き始めます。そんな雰囲気に僕はあこがれました。もちろん時代を追うごとに茶室の作風は変わっていくのだけれども。

展覧会のショーケースに並べられた数々の茶道具。どれも遠州にゆかりのあるものばかりです。しかし茶の作法を詳しく知っているわけではない僕にとって、それらを有り難く思えるほどの心境にはなりませんでした。キラキラと照明で照らし出された道具を見ても、思い入れが深くなるわけではなさそうです。やはり茶室のほの暗い空間のなかに置かれてこそ、こういう粗雑で不完全なものに美しさを見出していくことができるのでしょう。

僕の事務所は窓が小さく、朝、事務所の扉を開けた瞬間はほの暗い雰囲気に包まれいます。小窓から差し込んでくる光が、テーブルに散在するスケッチやら模型やらをほのかに照らしています。粗雑なそれらのものが、どこかかけがえのないものに思えるような雰囲気。そんな雰囲気も、照明をつけた瞬間に消え去ってしまいます。どこか、茶室の雰囲気に似ているのかな。

080111

写真は京都・大徳寺にある塔頭、孤蓬庵の前庭。ここには小堀遠州がデザインした庭や茶室があります。塀があるから中は見えない。どんなにお願いしても大抵は見せてくれない。隠して隠して隠しきる。京都の誇る(?)伝統ですね。粗雑な茶道具たちも、そうやって「地位と名誉」を得ていったのでしょう。なかなかお目にかかれないと、有り難く思えてしまいますからね(笑)

コメント
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