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コケ目地

2017-10-29 17:56:00 | 自由が丘の家


爽やかな秋のイメージとは裏腹に、今年の東京は雨続きです。そのせいか、ぼくの事務所の前のアプローチ舗装に芽生える「苔」たちも、なんだかいつもにも増して元気になっててきました(笑)
この舗装は「モルタルサイコロ」という粗雑なコンクリート片が敷きならべられてできています。
モルタルサイコロというのは、コンクリート工事の際に鉄筋のスペーサーとして使われるもので、純然たる裏方の材料です。
寸法の精度は悪く、表面は粗くガサガサ。
実はこれが良い味を出してくれるのです。

日本の職人さんはとても技術が高く、精度よくものごとを作るのが美徳とされます。
ですから、もっとラフな感じに・・・というオーダーは、逆にやりにくいそうです。
そこで、もともと寸法がいい加減な材料を、きれいに並べてください、とお願いすると、いい案配のラフな感じが出ます。

モルタルサイコロをきれいに並べても、当然スキマができます。
そのスキマに小さな植物の種が入り、数年越しでご覧の写真のような「コケ目地」ができました。
年月と共に味の出る、カタログには絶対に載っていないオリジナルなデザインです。
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オンブラ・マイ・フ

2017-08-26 17:24:14 | 自由が丘の家


東京ではひと頃の雨と涼しさが去り、また蒸し暑い日々が続いています。
窓の外の緑も、夏の湿気を帯びて存在感を増しているように思います。

一戸建ての住宅では、1階の窓から庭を眺めるのと、2階から眺めるのとでは、同じ庭でも、その感じ方はまるで異なります。
上の写真は、1階にあるアトリエ内の僕の席からの眺めです。

もともと小さな坪庭のような中庭ですが、上から緑がかぶさるような、木洩れ日が降り注ぐような雰囲気を楽しみたいと思って、スペースのとり方や窓の開け方を工夫しました。
そうして設計をしている時にちょうど、以前から知っていて時折聴いていたヘンデルの古典曲「オンブラ・マイ・フ」(Ombra mai fù)が、木陰の愛を唄ったもの、ということを知りました。

Ombra mai fù di vegetabile,
cara ed amabile, soave più

木陰で 今までで一度もなかった
これほど愛しくて優しくて、快いものは


ありがとうヘンデル!!と言いたくなるような、うれしい気持ちになりました(笑)

美しい小品と評される「オンブラ・マイ・フ」
僕がつくる住宅も、そんな風に感じとってもらえると嬉しいなあと思いつつ。

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光線

2016-11-28 22:01:23 | 自由が丘の家


日増しに秋が深まり、太陽の高さが低くなってくると、南に面した大窓からは室内に日差しが入るようになります。
一緒に、古い紅葉の木陰も連れてきて、ゆらゆらと揺れています。
家はまだ新しいけれど、古いものに寄り添うような空間の落ち着きがあります。
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ちいさな雨とい

2015-05-14 16:34:01 | 自由が丘の家


僕の設計アトリエの玄関の前に、古いモミジの木があります。
正確には、モミジを残すようにして玄関をつくり、そこに庇をかけました。
庇もギリギリまで延ばしたから、雨といをつける余地がないし、そもそも立派な雨といをつけるほど多量の雨水が庇から滴りおちるわけではありません。

そこで、何か目立たないようにそっと小さく雨といをつけられないか、考えました。
いろいろ探してみたけれど、あんまり小さいものはないし、どれも製品っぽさが強くて、あまり使う気になれませんでした。

そこで、わずかばかりに庇の上を窪ませ、庇の脇の方に水が流れるようにしました。
そこに板金屋さんに折り曲げてもらって箱といをつくりました。
箱といがとても小さいので、それよりもさらに細い電気配線用ケースを用いて、縦といの代わりにしました。

降ってきた雨を、そっと脇に流す。
その雨水を受けて、さらにモミジの老木は大きくなったような気が!
するのです。

この場所に植わって半世紀以上。今年も鮮やかな新緑を見せてくれます。
うーん、切らないでホントによかった。

玄関が主役ではなく、モミジが主役です。



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春の中庭

2014-04-16 23:44:16 | 自由が丘の家

最近は急に暖かくなってきて、庭の草木が一気に芽吹いてきました。冬の間に少し寂しかった庭も、にぎやかになってくるのが楽しいですね。

オノ・デザインのアトリエは、小さな中庭を囲むように建っていて、その中庭に向けて、小さな木製の小窓がひとつ、開けられています。窓は小さいのだけれど、シマトネリコの木が間近にあるので、窓を開けると、もう枝に触れるようになりました。

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アルミサッシではなく、木でできた窓と、草木は、やはり並んでみても馴染みがいい。窓を開けて、まだツヤツヤしている新芽を触るのも気持ちいいものです(笑)

小さな中庭には独特の情緒があります。デッキやタイルを敷くほどのスペースはなく、ピンコロ石で造られた古い花壇があるだけ。そこに「光の影」のようにしてゆらゆらと樹影が遊んでいるのを、なんとなく眺めているだけで、気持ちが落ち着いてきます。

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