気持ちのよい秋晴れの日に、「東山の家」で、雑誌の撮影取材が行われました。暑さ真っ盛りの8月にお引渡しをした、茶室のある住宅。その暑さのなかでも、四畳半と八畳の茶室はそれぞれ、室内に入ると背筋がぴっとのびる緊張感のある雰囲気に仕上がりました。精魂こめてつくってくださった工務店と職方たちの力によって、そのような雰囲気が得られたのだと思います。引渡し前後に現場に行っては、まだ茶道具やお軸も掛けられていない、まだ何も無い茶室のなかで、よく時間を過ごしたのを思い出します。
この度の撮影取材で、ぼくは初めて道具や床飾りなどが備わった茶室の姿を見ることができました。お施主さんが揃えてくださった道具類の数々が、然るべき場所に置かれると、それを待っていたかのように室内が生き生きとし始めたように感じました。道具に柔らかく降る、障子を通した自然光。同時にそれは道具に陰影と趣を与えてくれます。室内造作と、光と、陰りと、人と、道具。それらが居合わせることでできあがる空間の雰囲気を楽しみながら、撮影中の、静かで穏やかな時間を過ごしました。
撮影取材にあわせ、いろいろとご準備とご協力をしていただいたお施主さんには、本当に感謝の気持ちでいっぱいになります。そして、建築家としては、設計した空間について編集者・ライターの方に文章にしていただき、写真家によって空間の姿を記録していただけるのは、冥利に尽きる思いでもあります。