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ブルーノ・タウトの桂離宮

2023-02-02 22:49:09 | アート・デザイン・建築


京都の桂離宮に心奪われた人物は多くいますが、そのなかでも有名なのはドイツ人建築家ブルーノ・タウトの逸話です。
ブルーノ・タウトは、ナチスの迫害を逃れるため渡航先として選んだ日本で、京都で、桂離宮に出会いました。

タウトは桂離宮を「泣きたくなるほど美しい」と表現し、その記憶はイメージとして図像化され、一冊のドローイング集にまとめられました。
このドローイング集が、これまたとても美しく・・・。
少数販売の希少本ですが、たまたま古本屋で発見して手に入れたときは、ぼくも泣きたくなるほど嬉しい・・・とまではいかないまでも(笑)、宝物?にしている本のひとつです。

桂離宮では、風光明媚な自然を模した庭園に、簡素古朴を装ったパビリオンが点在しています。それらの建物のモチーフは農家であったりあずまやであったり。
ですがタウトのドローイングではそれらの姿形を再現するのではなく、むしろその断片のイメージをつかみ取って表現しています。

独特の飾り模様のついた窓辺から見える風景と、それらがつくりだすイメージとは。
桂離宮では、物事の見た目の姿そのものより、それらのものが暗示するイメージの連想にこそ主題がある。そんなことをタウトのドローイングは指し示しています。

日々の住宅の設計のなかでも、そんなイメージの広がりと豊かさを宿すことができたら・・・と、そんなことを密かに思っています。


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ガウディとともに

2023-01-14 22:57:29 | アート・デザイン・建築


2023年がスタートし、ぼく自身の仕事も、これまで積み上げてきた設計の技法をさらに展開していく一方で、学生時代に感じ取っていた自由さに向けてあらためてチャレンジしていきたいと思っています。

上の写真は、スペインのバルセロナにあるガウディの作品「カサ・ミラ」の屋上の煙突。
宇宙人?のようにも見える不思議な造形は、煙の上昇を促す煙突に適したカタチなのだとか。
そうした合理的なカタチが、同時にかわいらしいアイコンのようにも見える。そんなカタチのもつ力強さと自由さに、もっと目をむけたいなと思います。
写真の中央下方に、煙突を夢中で覗き込む、当時の建築小僧だったぼくの姿も写り込んでいます(笑)

そして下の写真は、学生時代に定型の建材ではなく自由なカタチを求めて、ある研究所のエントランスホールの内部照明を、石膏を用いて自主製作しているところ。
石膏が固化する前のじんわりと温かい感触が脳裏に浮かびます。
後輩がパチリと撮ってくれました。
現在の設計はパソコンの前でCADソフトを駆使するのが一般的ですが、カタチあるものを生み出す労力と手応えもあらためて思い出しつつ、新しい仕事に活かしていきたいと思います。

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残るものとは。

2022-12-31 22:27:38 | アート・デザイン・建築


今年も数件の設計した住宅が完成し、お引き渡しをすることができました。
どの家の設計であっても思い描いているのは、完成した時の姿ではなくて、何年も経ったときに立ち現れている雰囲気のこと。
気の長い話ではあるけれど、家づくりの魅力はそんなところにあるようにも思います。

写真は、10年経ったぼくの家の床。ナラの無垢フローリングと、ハンスウェグナーのCH47チェアの脚。
きれいに手入れもしないし、ラフに扱うから、傷だらけ。でもあえてそんな趣きを楽しみにしているところもあります。
この場所が好きというような愛着や、寄る辺の感覚は、こんなところに宿るように思います。
それから、窓から見える眺めや自然の光、陰影が美しければ、それでよし。

確かなものを選ぶ。残す。
そんなことを、来年も大事にしたいと思います。

今年もブログにお付き合いくださいましてありがとうございました。
どうぞよいお年を。

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時計塔モニュメント

2022-10-05 22:46:21 | アート・デザイン・建築


JR川口駅前にある「キュポ・ラ」広場に、ぼくが独立して設計アトリエを立ち上げて、初の実作があります。
それは建物ではなく、時計塔モニュメント。
新しくできた広場にあわせて時計塔モニュメントを募るデザインコンペが開かれ、ぼくの応募案が採用され実現したのでした。
鋳物の街・川口を表象するデザインが求められたものでした。柱部分を覆う素材は鋳物で、川口の文字が象形文字のようにして浮かび上がるようなデザインにしました。



案の採用後、実現に向けて主催者側とのミーティングが重ねられましたが、そのなかで、どの方向からも時計が見えるように、という意向を伝えられ、柱の頂部には3つも時計がつくことに。
電波時計とよばれるこの時計は高価で、柱本体の造作に関わる費用も結果的に削られることに・・・。
なにしろ独立当初は、実作を残すことに渇望していて、そんなデザイン変更の流れを受け入れたのでした。

下の写真はコンペ案の模型です。広場の待ち合わせ場所として、人々が時計塔のまわりに集まっているような光景をイメージしていました。
側面に張り出された時計が、レトロなモニュメント感を引き出してくれているようで気に入っていたのですが、これは実現することがありませんでした。でも見てみたかったなあ。




昨年の東京オリンピックの記念イベントの一環として、東京オリンピック1964の国立競技場 聖火台が、鋳造地の川口に凱旋することになり、しばらくこの広場に展示されていました。
あの有名な聖火台に並んで、時計塔が!!
これはちょっと萌えました(笑)

実現するということは、腑に落ちないこともあるけれど、喜ばしいこともあるものです。



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江戸からかみ

2022-04-09 21:18:07 | アート・デザイン・建築


あらゆるデザインで、simple is best とする志向は強くあります。
では、美しい装飾をデザインしてほしい、と言われると、なかなか難しいところです。
そんなことを思うとき、古来からのデザインにも目を見張るものが多くあります。

写真は、和室のある住宅の襖。襖紙として江戸からかみと呼ばれる和紙を選びました。
地の色も渋く、そこに黄金色で染められた波のモチーフが描かれています。
照明の具合で、見る角度によってくるくると表情が変わります。
古くに造られた版木が大切に保管され、今でも使うとのこと。
良いものは残り続けるのですね。

以前に、日本画家 上村松篁のエッセイを読んだとき、「川の水面から必要な線を引き出してくるのは苦労した」というエピソードがありました。
画家の手によって選ばれた線は簡潔でありながら、優美で装飾性のある線でした。

シンプルなもののもつ削ぎ落された美しさは好きだけれど、選び抜かれた線による装飾性もやはり惹かれるなあ。
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